地方自治体に本来のPFI手法を活用するインセンティブは制度的にあるのでしょうか?

FAQ

地方自治体に本来のPFI手法を活用するインセンティブは制度的にあるのでしょうか?

質問

  • 「財政状況の厳しい折、本来のPFI手法の機能を使って公的債務をオフバランスできるものならしたい。しかしながら、自治体の財政健全化指標の算定における実質公債費比率の算定方法が決められているので、そもそも制度的にオフバランスには出来ないのではないでしょうか。」

回答

財政状況を改善したいのであれば割賦払いのPFIを導入するインセンティブはありませんが、リスク移転型でオフバランスになるPFIであれば、導入のインセンティブは十分にあります

現状の割賦払いPFI事業を含めて財務健全化指標の算定をする場合には、割賦である以上そもそもオフバランスになっていないことから、減価償却分を除いた施設整備費全体が当然算定の対象となります。

総務省は割賦払いのPFI導入には反対しているということが出来ると思います。

PFIを導入する目的が、債務がふえてもかまわないので喫緊のキャッシュフローを改善することであるならば、別ですが、割賦払いは、税金に無駄遣いだけでなく、税務健全化にも不適切な手法です。

自治体の債務にならないような契約締結は可能ですので、その方法を選択することをお勧めします。。

<解説>

このような疑問は、PFI手法を導入しようとした時、財政担当と打ち合わせを始めると実際に出てくる疑問かもしれません。

少し古い資料になりますが、内閣府の「地方財政にかかわる最近の動き」を参考にしながら、この質問の回答について考えてみましょう。(出典は文末の脚注を参照)

①「起債制限比率算出にあたっては、PFI事業における債務負担行為にかかる支出のうち、施設整備費や用地取得費に相当するもの等公債費に準ずるものを起債制限比率計算の対象とする」②「実質公債費比率についても、平成19年6月14日付け総財地第150号総務省自治財政局地方債課長通知によると、PFIに関する経費は算入する」

となっています。

ここに記載されている「債務負担行為にかかる支出のうち、施設整備費や用地取得費に相当するもの等公債費に準ずるもの」および、「PFIに関する経費」とは何かを理解することが重要です。

これは、施設整備費や用地取得費を割賦払いで購入した場合に自治体のバランスシートにどのような影響を与えることになるかを考えてみればわかります。

2つのケースを考えてみましょう。

PFIという定義が明確になっていない中で使われているため、わかりにくくなっていますので、PFIという言葉を使わずに、次のようにケースを設定します。

ケース① 施設を割賦払いで購入する場合

ケース② 欲しい施設の内容を明示し、それを満たす施設を民間事業者に整備してもらい賃貸で施設を借りる場合

ケース①は、割賦契約で施設を購入する場合です。したがって、その施設を購入者である自治体が所有する場合は当然のことながら、民間に所有させてファイナンスリースで購入した場合であっても、バランスシート上、減価償却費を除いた施設整備費全額を債務として認識する必要があります。このように、割賦で施設を調達すると自治体の債務になることから、起債制限比率や、実質公債費比率の算定において対象になるという当たり前のことを総務省の通知は記載しているだけです。

それでは、ケース②の民間事業者が所有する施設に入居する場合はどうでしょう。

この場合は2つのパターンが考えられます。

どちらも、施設を整備するにあたり、民間投資が必要になりますが、民間事業者にしてみればそれをどうやって回収するかを問題にします。

最初のパターンは、利用者が30年間の賃貸契約を結んでくれて、途中で解約した場合には残りの期間の50%の賃料をペナルティとして支払ってくれる場合です。債務として計上するひつようがあるのは、残りの契約期間の賃料の50%です。

2つ目のパターンは、契約が1年間の事前通知によって解約できる場合です。この場合には、1年間の事前通知をして、一年後に新しいところに引っ越しをすることが出来るのであれば、特に債務を計上する必要がないことになります。

ケース②の場合は、いずれのパターンでも、ケース①で認識した施設整備費全額の債務にくらべると、債務が小さいか、債務のない形で契約が締結できることがわかります。

このような活用の仕方が出来る中で、簡単であるからという理由で割賦払いの契約を締結することは税金を無駄に使うだけでなく、財務状況を悪化させることに繋がりますのでさけなければなりません。

<参考資料>

「地方財政にかかわる最近の動き」http://www8.cao.go.jp/pfi/iinkai/shiryo_sb_20601.pdf

より抜粋

3.地方公共団体財政とPFI

<起債制限比率・実質公債費比率のPFIへの影響>

①起債制限比率・実質公債費比率のPFIに関する経費の算入について

平成12年3月29日付け自治画第67号自治事務次官通知によると、起債制限比率算出にあたっては、「PFI事業における債務負担行為に係る支出のうち、施設整備費や用地取得費に相当するもの等公債費に準ずるものを起債制限比率の計算の対象とする」ことになっている。実質公債費比率についても、平成19年6月14日付け総財地第150号総務省自治財政局地方債課長通知によると、PFIに関する経費は算入することになっている。

②起債制限比率・実質公債費比率のPFIに関する経費の算入の差異について 起債制限比率については平成12年度以降の債務負担行為に係る支出について算入するが、実質公債費比率ではそれ以前の債務負担行為に係る支出についても算入することになっている。

(参考)

1) 地方公共団体におけるPFI事業について(抄)(平成12年3月29日付け自治画第67号自治事務次官通知)

第2 PFI事業に係る債務負担行為の位置付け

PFI法に基づいて公共施設等の整備を行うために設定される債務負担行為は、効率的かつ効果的な公共施設等の整備のために設定されるものであり、「もっぱら財源調達の手段として設定する債務負担行為」(「債務負担行為の運用について」(昭和47年9月30日付け自治導第139号))に該当するものではないと解されること。

しかしながら、この場合においても財政の健全性を確保する必要があるので、PFI事業における債務負担行為に係る支出のうち、施設整備費や用地取得費に相当するもの等公債費に準ずるものを起債制限比率の計算の対象とするものであること。

2)実質公債費比率等について(抄)(平成19年6月14日付け総財地第150号総務省自治財政局地方債課長通知)

 

(1)エ「債務負担行為に基づく支出のうち公債費に準ずるもの」については、次のものを計上すること。

① 債務負担行為に基づく支出のうち法第5条に規定する地方債発行対象経費に相当するものとして省令で定めるもの(省令第7条)

PFI事業に係る支出のうち、公共施設又は公用施設の建設事業費及び公共用若しくは公用に供する土地又はその代替地としてあらかじめ取得する土地の購入費(当該土地に関する所有権以外の権利を取得するために要する経費を含む。以下「公共公用施設建設事業費」という。)に係るもの

3)地方公共団体の財政の健全化に関する法律(抄)

(定義)

第二条 この法律において、次の各号に掲げる用語の意義は、当該各号に定めるところによる。

(中略)

実質公債費比率 地方公共団体の地方財政法第五条の四第一項第二号に規定する地方債の元利償還金(以下この号において「地方債の元利償還金」という。)の額と同項第二号に規定する準元利償還金(以下この号において「準元利償還金」という。)の額との合算額から地方債の元利償還金又は準元利償還金の財源に充当することのできる特定の歳入に相当する金額と地方交付税法(昭和二十五年法律第二百十一号)の定めるところにより地方債の元利償還金及び準元利償還金に係る経費として普通交付税の額の算定に用いる基準財政需要額に算入される額として総務省令で定めるところにより算定した額(特別区にあっては、これに相当する額として総務大臣が定める額とする。以下この号及び次号において「算入公債費等の額」という。)との合算額を控除した額を標準財政規模の額から算入公債費等の額を控除した額で除して得た数値で当該年度前三年度内の各年度に係るものを合算したものの三分の一の数値

四 将来負担比率 地方公共団体のイからチまでに掲げる額の合算額がリからルまでに掲げる額の合算額を超える場合における当該超える額を当該年度の前年度の標準財政規模の額から算入公債費等の額を控除した額で除して得た数値

イ 当該年度の前年度末における一般会計等に係る地方債の現在高

当該年度の前年度末における地方自治法(昭和22年法律第67号)第214条に規定する債務負担行為(へに規定する設立法人以外の者のために債務を負担する行為を除く。)に基づく支出予定額(地方財政法第5条各号に規定する経費その他の政令で定める経費の支出に係るものとして総務省令で定めるところにより算定した額に限る。)

 

 

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