マレーシアのPPPからわが国のPFIの改善の方向性を見いだす。

マレーシアのPPPからわが国のPFIの改善の方向性を見いだす。

先日、東洋大学のアジアPPP研究所公開セミナーに参加し、国際イスラミック大学マレーシアのカヘアルーディン教授によるマレーシアのPPPの話を聞いてきました。

マレーシアのPPPの概要と、その具体的な内容についてはPFI/PPP標準化ブログで説明しましたので、興味のある方は参照してください。

<割賦払いの日本の特殊なPFI>

さて、2011年にPFI法が改訂され日本のPFIにもコンセッションの仕組みが導入されました。しかしながら、依然として日本のPFIは割賦払い方式のままです。

日本のPFIは、現在フィリピンやマレーシアを代表とするアジアで活性化しているPPPとは全く異なったものです。

日本のPFI手法は発注者が施設を所有することが多く、そのため、施設の劣化に伴う施設の不具合リスクが民間事業者に移転できていません。

このように、日本のPFIでは、民間事業者に本来とらせるべきである施設の維持管理上のリスクを公共側が抱え込んでいるのです。

<本来のコンセッション方式のPFI>

もともと英国で生まれたPFIとは、利用料金を公共が負担するサービス購入型であれ、一般の利用者に利用料金を負担させる独立採算型であれ、また、その中間である利用料金と補助金で成り立つJV型であれ、コンセッションの仕組みであることにはかわりありません。

コンセッションとは事業の運営権の期限付き譲渡であり、利用者収入が無い場合には、公共がそのサービス購入を約束する契約です。サービスの購入である為、サービスが適切に提供された結果として合意額の支払いが行われますが、サービスの品質が合意された要求水準を満たされない場合は、合意額を減額して支払いが行われます。

<民間へ公共が今までとっていたリスクを移転するPFI手法>

PFI手法が民間へのリスク移転の仕組みであると言われる所以は、民間事業者がコントロール可能なサービスの未遂行リスクや、サービス品質の低下リスクを民間に移転するので、民間ノウハウを使ってそれらがコントロールできるようになるからです。

民間にとれないリスクを移転しようとすると、民間が事業参画意欲をなくしてしまいます。

それでも無理にリスクを移転したまま民間に事業参画してもらいたければ、リスクプレミアムコストを支払うしか方法はありません。

重要なのは、民間がコントロール可能なリスクを民間に移転することです。民間は自らコントロールできるリスクであるため、事業遂行によって確実に利益が生み出せるようになります。しかもその価格が従来の公共が自らの責任で行っていた場合よりもコスト的に安くなる為に、官民にWIN-WINの関係が成り立つのです。

コンセッション権を確定することや、利用者が変動するリスクを民間に移転することを目的にしてしまうと事業は失敗してしまいます。

<必要だったのは物権ではないコンセッション>

従って、PFI法の改定では、物品を購入するという割賦払いを禁止すべきだったのです。

そして、公共が民間に運営権(コンセッション)を渡して、民間が適切な運営を行っている限りにおいて公共が当該サービスを購入しつづけるか、民間に利用者から料金を徴収する運営権(コンセッション)を与えるか、その中間の利用料金で足らない部分を民間が適切な運営を行ったことを条件に補助金として負担すれば良かっただけでした。

ところが、2011年のPFI法の改訂では、運営上の民間のパフォーマンス変動責任と関連性の無い物権としてコンセッション権を取り扱うようにしてしまいました。

国内の多くのPFIコンサルによると、コンセッション権を物件と見なして、融資の担保にすることによって、金融機関が事業介入しやすくなったとよく言われますが、本当にそうでしょうか。

なぜなら、事業介入をする時期は、事業が破綻する前の事業破綻の兆候が見え始めた段階であるべきであり、事業が悪化してからの介入では事業破綻の回避が極めて難しくなるからです。

事業に介入するのは、事業契約が生み出すはずの事業利益を生み出す機能に問題が発生した段階です。

その為には、コンセッション権を物権と見なして金額を確定することが重要なのではなく、事業が想定通りに機能し続けるための仕組み(事前に要求水準を設定し、モニタリングを行い、その結果を支払に連動する仕組み)を検討する必要があったのです。

<割賦ではキャッシュフロー改善と財務状況改善が両立しない>

PFIを専門にしている訳でもないのに、日本在住の外国人は、日本のPFIの仕組みはおかしいということを理解しているようです。

その理由は、多分バランスシート(B/S)と損益計算書(P/L)を理解しているからだと思います。

B/SとP/Lの関係が理解できていれば、割賦払いによってキャッシュフローを改善しようとすることは、財政状況を悪化につながると理解できます。英国においても、B/SとP/Lの導入後にPFIの仕組みが活性化しました。

<割賦ではなく、サービス料金の業績連動支払いに基づいたマレーシアのPPP>

日本は政府が民間の資金を活用して割賦払できるようにするPFI法律を国会で通しましたが、一方、マレーシアのPPPでは、基準として次の9つの要素を示しており、業績連動支払いにもとづいたサービス購入の仕組みであることがわかります。

1. 官民のパートナーシップの要素があること
2. 公共セクターがアウトプット仕様書(手段ではなく要求する結果を示す仕様書)を作成すること。
3. 民間セクターがイノベーティブで経済的な要素を持った具体的な手段や手法を示すこと
4. 支払いは、KPI(主要業績指標)に連動したものであること
5. 施設のメンテナンスが契約に含まれていること
6. 設計・施工・資金調達・メンテナンス・運営の要素を持っていること
7. コンセッション契約終了時には資産が公共に譲渡されること。
8. リスク配分が最適な状態になっていること
9. ライフサイクルコスティングを評価対象とすること。

<地方自治体のPFIの改善は可能>

日本のPFI手法は2011年の法改正によってコンセッションが導入されましたが、割賦払いの要素は残ったままです。また、国や、独立行政法人がPFI手法を導入する場合には、PFI法に縛られるため、コンセッションを利用する場合には、法律に準じてコンセッション権を物権と見なす必要があるかもしれません。

一方で、地方自治体は、地方自治法がPFI法に優先するため、PFI法に縛られる訳ではありません。アジアの途上国が導入できる程度までに、PPPのガイドラインは整備されています。

地方自治体が抱える老朽資産は多く、これらの対策に必要な投資を公共投資だけでカバーすることは不可能です。

今までのように、公共セクターが手段を決めるのではなく、要求するアウトプット仕様をきめ、民間にイノベーティブな具体策を低減させ、サービス内容をKPIでモニタリングし、業績連動支払い等によってリスク分担を最適な状態にすることで、ライフサイクルコストを低減させるPFI事業が活用できるようになります。

民間の資金と民間のノウハウを活用することで官民がWIN-WINになるという意味不明なPFI手法を、単なる割賦払いとして活用するのではなく、人類の英知を集めて構築したPFI/PPPの仕組みを活用して、自治体の経営改善に取り組んでいかれることをお勧めします。

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