10月28日付の日刊建設工業新聞の所論緒論に掲載しました。
欧州の戦略的インターネットPPP構想に習ってスマートシティ構想の位置づけを見直せ
最近スマートシティーという言葉をしばしば目にする。この背景には、増え続ける世界人口とエネルギー消費増加があり、それに伴い発生する二酸化炭素や大気汚染物質のコントロールの必要性がある。国連の世界都市化予測では、増加する人口は都市人口を増やし、2050年には世界の都市人口の割合が全人口の7割になるという。このように増え続ける人口の大部分が住む都市をコントロールするためにスマートシティ構想は重要である。しかも、この市場は2010〜2030年の間に累計で4,000兆円規模に達すると算定される巨大市場だ。
欧州委員会はこの市場を活用して欧州の経済を発展させるべく、インターネットを活用した官民連携を最重要戦略として位置づけている。
わが国にとっても、状況は同様であるが、わが国はICTを活用した街づくりに焦点が当たりすぎており、インターネットの国家的戦略の位置づけが見えない。実際に、スマートシティ事業を見ると、複数の特定事業者チーム間でデファクト基準の競争が行われているように見える。まるでかつての電化製品の価格競争のようだ。しかも、政府は自治体や企業に提案させるだけで国の役割が見えない。
欧州では、標準化されていない技術に対し企業同士が投資しあうことは無駄な投資に繋がるため奨励しない。代りに、官民が連携してオープンなフォーラム標準の構築を促進している。プログラムの推進、能力開発やインフラ構築の支援等も官民連携で進めている。
この未来のインターネットを利用した官民連携のフォーラム標準構築の為のプログラムが、FI PPP(Future Internet PPP)と呼ばれるものである。スマートシティは、この中の一つの実証実験として位置づけられ、欧州全体で連携をとりながら開発を進めている。FI PPPでは、インターネット活用の開発を以下の4分野に分けて2015年までの包括的な開発を行っている。2012年度末でフェーズ1が終わり、現在はフェーズ2の「能力開発」、「実証実験の更なるトライアル」の段階だ。
<フェーズ1の概要>
1)CONCORDプロジェクトによるプログラムの推進支援
2)INFINITYプロジェクトによるサーチエンジンXiPiの開発や、能力開発及びプロジェクトのインフラ構築支援
3)次の7分野に焦点を当てた実証実験
①交通、配送、農産物の3つに焦点を当てたFINEST、Smartagrifood、FIspaceの3プロジェクト
②個人の移動に焦点を当て白タク利用まで検討しているInstant Mobolityプロジェクト、
③社会連携したテレビ、モバイル都市サービス、ビデオゲームに焦点を当てたFI-CONTENTプロジェクト
④スマートシティと公共警備に焦点を当てたSafeCity、OUTSMARTの2プロジェクト
⑤スマートエネルギーに焦点を当てたFINSENY、FINESCEの2プロジェクト
⑥製造業に焦点を当てたFITMANプロジェクト
⑦医療に焦点を当てたFI-STARプロジェクト
4)インターネットの中核プラットフォームを設計・開発・実装するFI-WAREプロジェクト(NECも参加)
ところが、わが国では、総務省のICTを活用した街づくりの検討会において、FI PPPを「欧州におけるICTを活用した街づくりに関する取組事例」として紹介しており、フォーラム標準構築プログラムと位置づけていない。
わが国のIT競争力は世界経済フォーラムの調査によると世界144カ国・地域の中で21位と昨年度よりも順位を下げており、中でもITの活用度は、企業部門は世界2位と順位をあげているのに、政府部門が27位と順位を下げており政府が足を引っ張っている。
PPPは、官と民の役割分担を最適化するために、官が民の意見をくみ上げながら枠組みを構築し、戦略的に作業を進めていくしくみである。国際競争力がのびない原因が政府にあると言われないように、国は戦略的なインターネットPPPを促進し、スマートシティをその中に組み込んで適切に官民連携を進めていく必要がある。
熊谷さま
はじめまして。
武雄市長はなかなかユニークな方ですよね。
ホームページをすべてフェイスブック(見ていませんので未確認です)にしたりして、前例にとらわれない方ですね。
日本の現在のスマートシティは何か電力のセーブくらいで全然スマートでないので、あまり意味はないと思います。関わる人材が偏っているのでしょうね。もう少し土木・都市計画で建築屋でない人材が加わらないとダメです。
東電の福島を見ても土木の専門家の発言力がないので、あんなタンクを作っているわけで、土木の僕たちは早めに連続地中壁を作ればと言っていたのに。凍土でやるのはメンテナンス費用がかかるので反対ですが。
話は脱線しましたが、まちづくり全体で頑張ってください。