所論緒論 20141105 新たな官民連携でGDPを増やす

所論緒論 20141105 新たな官民連携でGDPを増やす

去る9月20-21日にケアンズでG20が開催された。わが国のマスコミは、この会合に殆ど注目しなかったが、世界的な公共投資の政策であるグローバル・インフラストラクチャー・イニシアチブ」(GII)がこの会合で合意されたことは注目に値する。今回のG20では、今年2月にシドニーでのG20で決めた「世界経済を新たに2%成長させる目標の達成」に向けて、各国が合計900件の成長戦略を持ち寄った。国際通貨基金(IMF)によれば、これらを実施すれば、1.8%の経済成長の押上にめどが着くという。これらの成長戦略の27%(240件以上)は、インフラ関係のものであったことからも、上記のGIIの合意の重要性がわかる。

一方、これまでの日本のPFI事業、市場化テスト、指定管理者制度等は、ガラパゴス化した日本特有の官民連携でありGDPを減らしてしまう手法であった。民間ノウハウを活用して、投資額を削減したり、公務員を民間事業者の雇用者に切り替えることで人件費を削減したりする方法で、事業コストをライフサイクルで削減するためGDPが減ってしまうのである。2013年9月末までに、418件のPFI事業の推進によって約4.2兆円の公共事業が実施され、約8,000億円のVFMが生み出されたといわるが、殆どがBTO方式又は、割賦払いのBOT方式であるため、約4.2兆円の公的債務が増加し、約8,000億円のGDPを減らしてしまったということもできる。

1999年に導入されたPFIは、このように、新しいハコモノ施設を割賦手法で整備したため、14年間の推進の結果、適用できる施設がほとんど無くなってしまった。2011年に導入されたコンセッションは、新しい施設だけでなく、既に出来上がっているインフラ施設の運営まで民間に委託しようとするものである。このコンセッションの仕組みは、公共施設の所有権を公的主体が有したまま、利用料金の徴収権と施設の運営権を民間企業に移すという点では、今までの指定管理者制度とPFIを組み合わせた仕組みと同じであり、公務員による運営を民間事業者の雇用者に切り替えることで人件費の削減を求めている。つまり、さらなるGDPの削減につながりかねない。このようなGDPを縮小させるような政策立案は、シドニー合意に反する。このようなガラパゴス化した日本特有の官民連携手法を転換し、GDPを増加させる国際標準のPPPを活用するGIIに我が国もシフトすることが必要である。

GIIとは、インフラ事業と投資家を結びつける情報共有プラットフォームの構築や、各国のインフラ事業のデータベースを統合してひとつのデータベースを構築することで、投資家をインフラPPP事業と結びつける支援を行う政策である。また、GIIは、これまで行政が公債で負担していた公共インフラ投資を民間投資に切り替える政策であり、この政策によって、行政の債務を増やすことなく、事業性のある民間による公共インフラ事業を新たに構築することによってGDPを引き上げる仕組みである。

このGIIの仕組みに我が国も賛同し、民間投資を活用して、日本が国際的に強みを持ち、将来グローバル市場として成長が見込まれる分野の社会インフラを整備し、国際展開を促進することが重要である。新興国のインフラ整備分野は、毎年約3.7兆ドルの世界需要があるのに対して、実際のインフラ投資は毎年2.7兆ドルしかなく、そのため毎年1兆ドルの投資不足が生じているという。この投資不足分を新興国国内外の民間投資で賄うことが求められている。我が国の民間投資促進戦略を適用する分野はここにある。

11月のG20では、我が国もGDPを引き上げるための、民間投資を促進する提案を提示する必要がある。例えば、JBIC・JICA・ADB等の国際開発金融機関の協調融資や無償援助に、民間金融機関の融資や、GPIFや保険会社からの長期投融資を組み合わせて、途上国のインフラ投資を活性化する民間投資を促進する新たな仕組みを検討する提案等を我が国から提示できるはずだ。

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