武雄市の図書館とTSUTAYAのコラボレーションについてチェックした

武雄市の図書館とTSUTAYAのコラボレーションについてチェックした

今話題の武雄市の図書館。すばらしいという記事がたくさんある一方で、批判もそれなりに出ているようだ。

さて、実際に訪問した人の意見を見る限りにおいてはすばらしいという評価が非常に多い図書館ではあるが、この図書館を官民連携が理想的に行われた図書館事例として捉えることは適切なのであろうか。

武雄市の図書館の情報は「武雄市問題文書館 資料室」http://www.nantoka.com/~kei/TakeoReferences/ を参照した。このサイトで開示されている「武雄市図書館。歴史資料館の管理運営に関する協定書」を参考に、武雄市の図書館と蔦屋のコラボレーションは適切であるのかについて検証してみた.このサイトは武雄市の図書館に対して批判的なサイトであるが、引用している資料は客観性の高い資料として信頼できると考えられる。

実際の運営においては、スタッフが活用する運営マニュアルのようなものが存在していると考えられるが、それらのマニュアルのベースとなっているのは、武雄市と蔦屋の協定書「武雄市図書館。歴史資料館の管理運営に関する協定書」であり、そこに含まれている「武雄市図書館・歴史資料館管理業務仕様書」である。

この協定書を見る限りにおいて、サービス水準について発注者と事業者間でもめ事が生じないのかが気になる。なぜなら、要求内容を評価する基準が明確でないにも関わらず、基準を満たさない場合は指定を取り消すとなっているからである。

1. 協定書と仕様書の関係

協定書において業務に関連する部分として4つの重要な項目が記載されている。

1−1.管理業務の内容は、以下の3つとした上で、別紙「仕様書」に定める通りとしていること

①  図書館/歴史資料館の利用に関すること(歴史資料に関するものは除く)

②   図書館、歴史資料館の維持管理に関すること

③   その他図書館、歴史資料館の管理運営に関して黄河必要と認める業務

1−2.管理物件は、財産台帳及び物品台帳に記載したものとして善管注意義務が付されていること。

1−3.指定管理者の責務は次の3つであること

①      関係法令及び協定に従い、真義に沿った誠実な履行と、円滑な運営を求められていること。

②      利用者の被災に対する第1次責任を有しているものの、最終責任は武雄市にあること。

③      継続が困難になった場合やその恐れがある場合の報告義務があること。最終責任は②と同じ。

1−4.報告内容は次の4つであること

①      管理業務の実施状況

②      図書館/歴史資料館の利用状況

③      管理経費の収支決算

④      その他武雄市が必要と認める事項

2. 仕様書の記載内容

2−1 明確に記載されていない要求水準

① 要求項目は記載されているが、具体的な要求水準は記載されておらず、適切に行う、積極的に行う、万全を期する、心がけること、努めること、支障がないようにすること等の漠然とした要求がなされている

② 利用者満足度調査と教育委員会モニタリングが行われることが記載されているが、

ア)何を基準にどのような調査やモニタリングが行われるのか、

イ)調査やモニタリングの具体的な頻度、

ウ)調査やモニタリングの内容についての合意が行われるのかどうか

 — についての記載がない

2−2 指定の取り消しが市の主観的な判断で行われる可能性があること

① 市が必要と認める場合は、業務改善勧告、是正指示がだされることになっているが、要求水準が明確に設定されていない中で、何を根拠に業務改善勧告や是正指示が出されるのかがわからない。このような規定において他の自治体でしばしば起きていることは、業務改善勧告や是正指示を出そうとすると、事業者からそれは追加指示であると指摘され、追加費用を要求されることである。もし、問題が生じたとした場合は、最初に要求を明確に示していない武雄市に問題があったと考えることが妥当である。

② そもそも、このような、改善要求で合意が得られるかどうかの問題はあるが、改善が見られない場合及び業務がこの仕様書で示す管理業務の基準を満たしていないと判断した場合は指定が取り消されることになっている。これは業務改善勧告や、是正指示とも関連してくるので、具体的にどのようになっているのかを確認する必要がある。

3 仕様書に記載されている管理の基準

3−1 仕様書に記載されている管理の基準の内容は以下の9項目であるが、業務そのものについての基準はどこにも記載されたていない。

(1)開館時間及び休刊日

(2)人員配置の基準

(3)選定基準

(4)仕様の許可の基準

(5)清掃に関する詳細事項

(6)安全に関する事項

(7)個人情報の取り扱いに関する事項

(8)帳簿等の備置及び文章等の管理

(9)その他 (駐車場と法令)

 

4. 望ましい仕様書

本来作成されなければならなかった望ましい仕様書は、明確な業務遂行指針に基づいて以下の5項目が連動しているものであった。

① 業務内容

② それぞれの業務の要求水準および業績指標、

③ その要求水準および業績指標のモニタリング手法

④ それぞれの水準や指標が満たされなかった場合の修復許容時間

⑤ 以上の4項目で修復許容時間までに対応できなかった場合のペナルティと支払いメカニズム

これまでにも、いろいろなPFI事業、指定管理者事業、市場化テスト事業等が実施されているが、仕様書の要求水準部分に対して払われている注意が少ないことに驚かされる。

今回の武雄市図書館が、市長と蔦屋のコラボレーションで結果的にたまたまうまく行ったかもしれないが、問題が生じた場合には、既存の協定書では問題を解決することは出来ない。

特に、今回の武雄市図書館のリニューアルには、武雄市が4億5000万円、TSUTAYAを運営するカルチュア・コンビニエンス・クラブが3億3000万円を出したことになっており、指定が取り消された場合に、どのようにして運営を切り分けるのかについては明確化されていない。

良い結果が出たものとしてトライアルとしての大きな意味はあるが、要求水準を明確にしないまま、民間事業者から投資を引き出す方法が適切な事例として広がってしまうことには大きな危惧を感じる。

5.望ましい今後の方向性

図書館業務は、それぞれの図書館においてマニュアルが整備される等されているが、自分たちで業務を行うことを前提として策定したものであるため、業務が適切であるかどうかを判断する基準や、そのモニタリング手法等については十分な整理がなされていない。

一方で図書館のパフォーマンス指標についてはISO11620が作成されている。ISO11620の指標は,バランスト・スコアカードの考え方に基づき,それぞれ「情報資源・アクセス・基盤」「利用」「効率性」「発展可能性」の4つの視点に振り分けられており,さらにその中で「所蔵資料」「アクセス」「設備」「職員」「全般」の5つの図書館の活動領域に分類されている。

これらの指標を継続改善させていくことを前提としながら、仕様書の中に組み込んでいったり、それぞれのサービスの具体的な要求水準を設定する等しながら、図書館運営を望ましい形で継続していくことが望ましいと考えられる。

図書館に限らず、PFI、PPP、指定管理者事業、市場化テスト事業のいずれにおいても、業務の重要度を明確に示し、要求水準を明確化し、水準が達成できていないことが発覚してから、要求水準を満たした状態に戻すまでの修復許容時間も明確化した上で、モニタリングの仕組みを構築し、不適切な運営の場合にはペナルティーとしての減額を発動する仕組み、継続改善指標の設定等を導入し、官と民と利用者を含んだその他の関係者のすべてがMultiple WINとなる仕組みを構築することが重要である。

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