神奈川県「保健福祉大学」のPFI導入に関する検証結果をチェックした

神奈川県「保健福祉大学」のPFI導入に関する検証結果をチェックした

衛生研究所⑴、近代美術館⑵に続いて、保健福祉大学の評価についてみてみよう。

本文: 県有施設のPFI導入に係る効果等に関する検証結果

添付資料:同報告書 巻末参考資料

本報告書の大きな問題点は、本文だけを見て巻末参考資料の詳細を見ないと、この報告書の問題点が見えないところにある。

調査結果は添付資料から確認すると以下の通りである。この添付資料の評価部分に基づいて本文が策定されているため、本文だけを見る限りにおいては、問題がなさそうに見えるが、本来の評価はどうあるべきかを考えると改善が必要な問題点があることがわかる。

神奈川県立保険福祉大学のPFI事業の評価

1.学生及び教職員への既往アンケート

1−① 清潔さ・温度管理等

設問:清掃状況、清潔感、空調の快適さ、空気の清浄具合、騒音、床の歩きやすさ、主観的な気持ちの良さ等といった
基準から「快適性」についての満足度を5段階で回答。
評価選択肢
割合
5 良い
31%
4
38%
3 普通
27%
2
3%
1 不満
1%

評価 快適性に関して、満足度5及び満足度4を選んだ人の割合は約69%で、満足度3(普通)を含むと96%となっており、概して快適な環境が維持されていると考えられる。

本来の評価:満足度3(普通)を下回ると評価するものが4%いる。2および1(不満)と評価したものの内容について確認する必要がある。普通を上回ると評価した4と5の合計が69%であり、普通が27%と高いことから、概して清潔な環境が維持されているものの改善の余地はあると考えられる。

1−② 施設・設備案内/施設・設備設計

設問:使いやすいスペースか、備品類は使いやすいか、安全上の不安はないか等と行った基準から「機能性」について
の満足度を5段階で回答。
評価選択肢
割合
5 良い
27%
4
37%
3 普通
31%
2
4%
1 不満
1%

評価 機能性に関して、満足度5及び満足度4を選んだ人の割合は約64%で、満足度3(普通)を含むと95%となっており、概して機能性及び利便性のある環境が維持されていると考えられる。

本来の評価:満足度3(普通)を下回ると評価するものが5%いる。2および1(不満)と評価したものの内容について確認する必要がある。普通を上回ると評価した4と5の合計が64%であり、普通が31%と高いことから、概して清潔な環境が維持されているものの改善の余地はあると考えられる。

2.在勤する県職員へのアンケート

2−① 清潔さ/温度管理等

設問:施設は常に清潔さが感じられますか。
評価選択肢
割合
A 十分清潔
81%
B 十分とは言えないがおおむね清潔
15%
C 清潔に感じられない場所があった
4%

評価:A及びBを選んだ人の割合は96%となっており、概して清潔な環境が維持されていると考えられる。

本来の評価:Cが4%いることから、場所の特定と改善対応が必要である。概ね清潔な環境が維持されていると考えられるが、Bが15%いることから改善の余地はある。

2−② 施設/設備案内

設問:施設を利用するにあたって、わかりやすい案内表示さされていますか。(案内板出入り口表示等)
評価選択肢
割合
Aわかりやすい
29%
B普通
58%
Cわかりにくい
38%

評価:A及びBを選んだ人の割合は87%なっており、概して利用者にとって利便性のある案内表示がされていると考えられる

本来の評価: Cが38%と、分かりにくいと評価するものが全体の3分の1以上いることがわかる。場所の特定と改善対応が至急必要である。

この評価は普通ではない。評価した人の3分の1以上がわかりにくいと言っていることを「概して利用者にとって利便性のある案内表示がされている」という評価に結びつけてはならない。それは、このような評価を行うと、他の施設でもこの程度で良いのかという話になるからである。

分かりにくい場所があることによって、何らかの運営上の問題が生じている可能性もあり、分かりにくい場所の特定と改善対応が至急必要である。

2−③ 温度管理等

設問:施設を利用するにあたり、温度管理や寄稿対策が適切にされていて、快適に利用できますか
評価選択肢
割合
A 十分快適に利用できる
24%
B 普通
52%
C 快適でない
24%

評価: A及びBを選んだ人の割合は76%となっており、概して利用者が過ごしやすいよう気候対策がとられていると考えられる。

本来の評価: この評価もCが24%と、分かりにくいと評価するものが全体の約4分の1いることがわかる。場所の特定と改善対応が至急必要である。

この評価も普通ではない。施設設備案内ほどではないが、評価した人の約4分の1が快適でないと言っていることを「概して利用者が過ごしやすいよう気候対策がとられている」という評価に結びつけてはならない。それは、上記と同様に、このような評価を行うと、他の施設でもこの程度で良いのかという話になるからである。

快適でない場所があることによって、何らかの運営上の問題が生じている可能性もあり、快適でない場所の特定と改善対応が必要である。

2−④ 施設/設備設計

設問:施設内の各設備備品等は利用しやすいものになっていますか(トイレ,音響設備,展示パネル,事務機器等)
評価選択肢
割合
A 十分利用しやすい
24%
B 普通
65%
C 利用しにくい
11%

評価: A及びBを選んだ人の割合は89%となっており、概して利用者が過ごしやすいよう施設・設備の設計がされていると考えられる。

本来の評価:Cが11%と全体の10%を超えており、前の2項目ほどではないが、許容範囲を超えていると考えられる。利用しにくい部分の特定と改善対応が必要である。

10%以上の人が利用しにくいと言っているのを、許容範囲と捉えるかどうかであるが、民間事業者であれば、95%から98%が普通以上と評価しているのであれば、概ね良いと言えるのではないだろうか。

2−⑤ サービス全般

設問:そのたサービス全般について、特段にまんぞくあるいは不満に感じる点がありますか
評価選択肢
割合
A 特段に満足できる点があった。
36%
B 特段不満足な点があった
9%
C 特になし
55%

評価:Aを選んだ人の割合は36%であるのに対して、Bを選んだ人の割合は9%となっており、概して利用者にとってサービス全般が受け入れられていると考えられる。

本来の評価:Aが36%、Bが9%と、AがBの4倍であり、満足できる点があったと言う人が多かったことがわかる。ただし、Bの9%は、決して少ない値ではないことから、改善の余地はまだあると考えられる。

3.不適切であっても対応をしていない背景

評価が甘いと言わざるを得ない。

このような要求水準に対して適切に対応できない事業者に対しては、支払いの減額等のペナルティや、契約の解除等の対処が必要である。

多分、満足のいく要求をすると事業者から追加要求されるのでコストアップになると言われるのかが嫌なため、要求していない可能性もある。

コストは下がったとしても、このように評価が悪いのであれば、VFMがでているとは言えないかもしれない。

また、あまりにも主観的な評価だけでは、改善点が見えてこないので、このような調査を行う際には、悪い点は具体的に指摘してもらって改善活動に活用できるようにしておく必要がある。

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