FAQ

FAQ

英国のPFIの仕組みを日本に導入する意味はあるのでしょうか?

質問

英国でPFIを導入した理由は、公共調達の工事が期限内に完成せず、コストが予算をオーバーすることが頻繁に起きていたので、契約によって工事を工期内に終わらせ、価格を変動させない為にPFI手法が導入されたと聞きます。日本では、入札価格がきまると基本的には価格の変更はありませんし、工事も工期内に終わるものが大半です。英国式のPFIの仕組みを日本に導入する意味はあるのでしょうか?

回答

十分に意味はあります。それは、英国では、価格と工期の問題を解決する為に導入したのですが、その手段として活用したアウトプット仕様書とモニタリング結果を支払いメカニズムと連動させて、サービスの品質が劣化しないような仕組みを構築したこと。そして、施設の更新に従来必要であった公共投資を民間投資に切り替えることが出来たというメリットがあるからです。

公的債務が日本国のGDPの200%を超えている現状においては、既に英国型のPFIを使わざるを得ない状況になっているのに、なぜ、割賦払いが促進されているのか理解に苦しむところです。

せっかく財政改善に活用できる仕組みであるのに、現在の割賦払い型の日本版PFIの仕組みでは、PFI事業の投資は公共投資のままです。キャッシュフローを改善する為の暫定的な資金調達にしか民間資金を活用していませんので、PFIを導入するたびに債務はさらに膨らんでいきます。

PFI法という特殊な法律によって、公共事業の割賦払いに民間資金を使えるようにしている国は日本以外に聞いたことがありません。割賦払いは財政改善に反する仕組みですので、財政健全化法と背反しています。法律の整合性を考えると早急に改正が求められる法律であると考えられます。

重要なのは民間投資として民間資金を使うことです。負債を膨らませて、キャッシュフローを改善する為には民間資金を活用する価値はありません。

 

英国で導入されたPF2という手法はPFI手法とどのように異なっているのでしょうか。

質問

英国では、PFIの進化系調達手法としてPF2が導入されたとききます。PF2とPFIは、どの部分がどのように異なっているのでしょうか。

回答

英国では、公共がマイノリティーの投資家になるという要素を含んだ新たなPF2の仕組みがスタートしようとしています。以下にPFIの概念と、PF2がPFIとどのような点がかわったのかについて簡単に説明します。

PFIの概念: 公共が望むサービス水準を維持・向上させる“施設の設計・建設・維持管理・運営の民間投資による計画”を民間に提案させ、かつ、民間に“サービス品質”と“施設が利用できること”を保証させる固定価格の長期契約を締結する仕組みを言う。

アウトプット仕様書(手段や手法や性能ではなく、達成したい結果を示した仕様書)を公共が作り、具体的な事業提案は事業者に設計建設維持管理運営を任せる民間投資の形で整備させます。割賦ではなく、あくまでも民間投資であることが重要です。そして、民間は公共が要求したアウトプット仕様書(具体的にはサービスの品質であり施設が利用できることを要求した仕様書)に基づいて、サービスの品質が低下したり、施設が利用できなくなったりした場合には、支払いが減額される契約を締結します。ただし、民間は、確実に品質を維持し、施設が利用できる状態で施設の維持管理を行うため、長期的に確実に収益を上げることが出来るような仕組みになっています。

⑴ PF2とPFIの違いは、PFIでは100%民間投資であった部分が、簡単に言うと50%民間投資、50%公共投資になるというものです。

⑵ このとき、民間投資をへらすのではなく、公共投資を追加して出資したので、10:90であった出資負債比率が20:80となり資金調達コストが削減され、機関投資家の安い金利での資金が活用できるようになります。

⑶ また、公共が投資をすることから、SPCに公共セクターから役員が送り込まれ、SPCの状況を内部監査できるようになり、契約後に生み出された新たな利益については、官民で折半することが出来るようになるというものです。

⑷ さらに、おもなリスクは、施設の大規模修繕リスク及び施設の不具合リスクである為、ハコモノの維持管理を中心に民間に委託する仕組みにしました。そのため、投資が不要な清掃サービスや、ケータリングはPFI事業の契約対象から外すこととなっています。

⑸ 加えて、従来民間にとらせていた一部の法律変更リスク等は公共がとるように見直しが行われました。

⑹ 最後に、英国の場合は、事業毎に仕様書や契約書の標準化が進んでいますので、これらを活用して優先交渉権者選定から18ヶ月以内に契約を締結しなければならないというルールも新たに付け加えられました。

このようにPF2は、PFIの基本的なコンセプトは引き継いでいますが、それを改善したモデルということが出来ると考えられます。

ただし、一旦PFIのプロセスを踏んで品質のモニタリングやリスク分担がうまく行っている英国であるので、この仕組みはうまく機能しますが、今の日本版PFIの割賦払いの中には、このような品質変動リスクを免官に移管する仕組みがありませんので、PF2を導入することは困難です。一度、PFIのプロセスを踏んだ上で、PF2に切り替えることをお勧めします。

 

民間の創意工夫と適切なリスク移管をふまえたPFI事業の例について⑴

質問

民間の創意工夫と適切なリスク移管をふまえて、次のようなPFI事業の例が成り立つでしょうか

ケース1)市立体育館のPFI案件として以下のような概要で民間資金を活用することでVFMが生まれるPFI事業は成り立つでしょうか。

  1. 民間が場所も提案して市立体育館をたてる
  2. 一定条件で、市立体育館として市民らに便益を図る
  3. 利用者の利用料金 + 市の財政支援で収支をとらせる
  4. これらをパッケージで提案させ、透明なプロセスを通す。

回答

失敗した事例ですが、英国で類似したPFI案件が成立していますので、成立する可能性がないとは言えません。しかしながら、民間が場所も提案して契約を締結するにはかなりのハードルがありそうですので、最初からそのような案件に取り組むことは進められません。

1.スポーツ施設へのPFI手法は適切ですが、土地を含めた自由提案は適正な案件合意が困難だと思われます。

スポーツ施設に活用されるPFI事業は、多くの場合、独立採算では回りません。そのため、利用者からの料金収入と補助金によって成り立つJV型のPFI事業として考えることができます。英国においても、同様のタイプの事業です。英国では、総合スポーツセンターのPFI調達パッケージが出ており、これを参考にすることが可能です。

2の一定条件が要求水準であり、3の利用料金設定が利用者料金と市からの補助金であるとすると、事業は成り立つと考えられます。但し、1の前提条件がついた4のパッケージ比較は、支払額の比較が非常に困難となるので条件にしない方が良いと考えられます。

2.土地の自由提案を認めたPFI事業が過去に英国で失敗しています。

本提案例では、場所を特定せずに事業者に提案させると言う要素が含まれています。この案件と似たようなPFI案件が英国で導入されたことがあります。1996年に英国の Leeds市にオープンした the Royal Armory Museum(武具博物館)です。但し、このPFI事業は破綻し、直接公共運営になってしまった一つの失敗PFI事例の1つです。この失敗例を使いながら、追加説明をします。

2−1.事業の概要

場所がオープンだったのは、既存のArmory Museumの老朽化と、展示施設の拡大ニーズはありましたが、特に場所を設定する必要がなかったためでした。土地は、結果的には別の公共組織の土地をクライアントがリース契約をして事業者に再リースしたものであり、本案件は来場者の入館料で成り立つコンセッションタイプでした。

2−2.来場者予測

1993年10月の当初の予測は、初年度が60万人強、2年度以降は80万人弱でした。

また、学校の訪問や、外国人ツーリストを除いた別の予測は、初年度が90万人、2年度以降は100万人であり、学校の訪問と外国人ツーリストを含んだ予測値は初年度が120万人弱、2年度が125万人程度、3年度以降が130万人でした。

入場料と、運営費用がバランスする採算分岐点は55万人の入場者でしたので、入場者数が採算分岐点を下回ることは無いと想定されていましたが、実際の入場者は、初年度が32.4万人、2年度が34.4万人、3年度が32.7万人、4年度は19.1万人となり、4年度は採算分岐点の入場者数の35%以下でした。

予想を遥かに下回る来館者であったため、事業者も、来館者数予測をした発注者側の責任だと争議になりました。結果的には、発注者による施設の買い取りで決着したはずです。

3.教訓:類似施設の無かった場所では事業予測が困難であり、民間にリスク移転することは困難です。

多くのPFI事業が公共が有している土地に施設整備をするのは、土地は減価償却が出来ないことから、土地代も含めたサービス料になると非常に高いものになってしまうという理由だけではなく、その土地における利用者数の予測が困難であるからだと考えられます。

土地代の問題は、次の事業のバリエーションで片付けることが出来ます。しかしながら、来館者の予測は、特に新たな場所で新たな事業を実施する場合には困難であり、そのため、その予測に基づいた入館料の変動リスクを民間に移管することには無理があります。

4.バリエーション

土地を定期借地権として土地代をコスト化する方法や、契約最終日における土地代を含めた施設の残存価格での購入等と言う方法をとれば、土地代が減価償却できない問題点は解決することが出来る可能性があります。本案件も、土地のリースによって対応したものでした。

5.支払いメカニズム

利用者料金と市の補助金の割合をどうするのか、合意した額が適正かどうかをどうやって判断するのか等、利用者予測に関連した問題点が生じてきます。これらの問題は、補助金の性格上、想定される利用者数とその収入についての適切な合意が必要になるため、利用者数の予測が困難な案件では、これらの問題点に関する合意が困難になると考えられます。

英国においては、民間事業者が予測することが困難なリスク(入場者数変動リスク等)は、このような失敗事例をフィードバックして、民間に委託することは適切ではないと考えられています。

2011年のPFI法の改定は、このような民間にとらせることが困難なリスクを、無理にとらせようとしているような印象を受けるので、利用者が変動するリスクのあるコンセッションでは、十分な検討が必要です。

日本のPFI手法と外国のPFI手法はどのように違っているのですか?

質問

よく日本版PFIという表現を聞きますが、日本版PFIと外国のPFIはどこがどのように違っているのでしょうか。

回答

日本のPFI手法は、PFI法が施設整備を目的としたものであり、公共の施設所有(割賦払いによるBTO手法)がみとめられていますが、外国のPFI手法は、民間がリスクをとる投資によって施設が整備され、公共はサービスを購入することが前提です。

キャッシュフローの観点から見ると支払いが平準化されている点においては共通していますが、民間資金を利用してもそれが公的債務の増大に繋がる手法(日本版PFI)と民間の債務であるため公的債務は増大しない手法(海外のPFI)の違いがあります。

PFI手法は英国で生まれた手法といわれます。

しかしながら、漠然とした表現(民間の資金とノウハウを活用してVFMを生み出す仕組みです)で説明されているだけで、実際にどのような仕組みであるのかの説明はあまり行われていません。

従って、このような説明を受けた人は、よくわからないけれど日本のPFIも英国のPFIも同じ仕組みなんだろうと考えてしまうのではないでしょうか。(PFI手法がどのような手法であるのかを政府が十分に理解していないことが内閣委員会の答弁でよくわかります。)

それでは、日本のPFIと英国のPFIには具体的にどのような違いがあるのでしょうか。(英国ではPF2手法(PFIの最後の文字”I”を”II”にバージョンアップしたとして名付けられた手法)の導入が進められていますが、基本的な考え方は同じであるため、ここでは、あえてPF2の詳細には触れません。)

 

内閣府のPFIについての説明

「PFIとは、公共事業を実施するための手法の一つです。
民間の資金と経営能力・技術力(ノウハウ)を活用し、公共施設等の設計・建設・改修・更新や維持管理・運営を行う公共事業の手法です。あくまで地方公共団体が発注者となり、公共事業として行うものであり、JRやNTTのような民営化とは違います。
正式名称を、Private-Finance-Initiative(プライベート・ファイナンス・イニシアチブ)といい、頭文字をとってPFIと呼ばれています。」

<重要なポイント>

ネットで調べると、いろいろなコンサルタントや、PFIを推進する組織がPFIについての定義をしていることがわかります。

しかしながら、上記の内閣府の定義と大きな違いはなく、民間の資金とノウハウを活用した公共施設の整備手法であるという表現が大半です。

共通しているのは、そこにどのような仕組みがあるのか、なぜ民間資金を使う必要があるのかについての説明がないことです。

これは、PFI法が、PFI手法を施設を整備するための手法(施設を割賦払いによって購入するための手法)として捉えていることがその原因ではないかと考えられます。

What is the Private Finance Initiative (PFI)?  (英国のPPP Forumによる説明)

PFI is a procurement method where the private sector finances, builds and operates infrastructure and provides long term facilities management through long term concession agreements. These agreements transfer substantial risks to the private sector in return for payments over the concession life which is usually at least 25 years. Payment is only made if services are delivered according to the requirements of the concession agreement.

日本語訳:

PFIとはひとつの調達方法であり、民間セクターが資金調達し、建設し、インフラの運営を行い、長期的な施設管理を、長期的なコンセッション契約によって提供するものです。この合意によって、重要なリスクが民間に移転され、そのかわりに、普通は最低25年であるコンセッション期間にわたる支払いを得ることになります。支払いは、コンセッション契約の要求に基づいたサービスが提供された場合にのみ行われます。

<重要なポイント> 

長期的なリスク移転の仕組みであって、サービス購入の仕組みであることです。割賦払いはサービス購入ではなく、資産購入時に債務を確定してしまうので、リスクを移転することは出来ません。

ググって見つけたサイトで、なかなか、うまく説明しているなと思ったのが、UKEssays.com のPFIについての説明です。

The PFI, known as Private Finance Initiative, is a type of Public Private Partnership procurement method implemented in UK construction industry in 1992. (Chinyio and Gameson, 2009) As an important part of Government’s strategy for delivering high quality public services, Private Finance Initiative requires the private financers to put its own capital at risk to deliver clear defined public projects for a long term period, ensuring the quality of the work delivered within the time and budget. (HM Treasury, 2009) OGC (2007, p.6) defined PFI as “Where the public sector contracts to purchase quality services, with defined outputs from the private sector on long term basis, and including maintaining or constructing the necessary infrastructure so as to take advantage of private management skills incentivised by having private finance at risk.”

日本語訳)

Private Finance Initiativeとして知られるPFIは、1992年に英国の建設業界で導入された官民連携による調達手法です。品質の高い公共サービスを提供するための政府の戦略の一部として、PFIは民間の投資家にリスクのある投資をさせ、長期にわたって明確に規定した公共事業を実施させ、限られた時間と予算内で仕事の品質を確実にするものです。OGC(政府の調達支援組織)はPFIを、「長期にわてって民間セクターから事前に規定した結果を伴うように、メンテナンスや必要なインフラの建設を含む形で、品質の高いサービスを購入するための契約を結ぶものであり、リスクをとる民間ファイナンンスを使うことによってインセンティブが与えられた民間の管理スキルをうまく活用できるようにしたもの」と定義しています。

<重要なポイント>

民間がリスクをとる投資をおこなうこと(民間の債務によって施設投資が行われることを意味する。)と事前に結果が規定された”高い品質のサービス”を購入するための仕組みであること、が明確に規定されています。

割賦をするとキャッシュフローが改善します。しかも単なる分割払いですので契約も簡単です。弁護士やコンサルに払う費用も少なくてすみます。これは、短期的なメリットかもしれませんが、長期的に財政健全化に反する手法を選択する理由にはなりません。

上記の情報は、Definition of PFI 等のワードでグーグル検索をすれば出てくるものです。パブリックドメイン情報ですので、知らないですますことは出来ません。PFIの担当者はこのことを十分にふまえて、議会での質問が出ても十分に対処できるようにしておく必要があります。

地方自治体に本来のPFI手法を活用するインセンティブは制度的にあるのでしょうか?

質問

  • 「財政状況の厳しい折、本来のPFI手法の機能を使って公的債務をオフバランスできるものならしたい。しかしながら、自治体の財政健全化指標の算定における実質公債費比率の算定方法が決められているので、そもそも制度的にオフバランスには出来ないのではないでしょうか。」

回答

財政状況を改善したいのであれば割賦払いのPFIを導入するインセンティブはありませんが、リスク移転型でオフバランスになるPFIであれば、導入のインセンティブは十分にあります

現状の割賦払いPFI事業を含めて財務健全化指標の算定をする場合には、割賦である以上そもそもオフバランスになっていないことから、減価償却分を除いた施設整備費全体が当然算定の対象となります。

総務省は割賦払いのPFI導入には反対しているということが出来ると思います。

PFIを導入する目的が、債務がふえてもかまわないので喫緊のキャッシュフローを改善することであるならば、別ですが、割賦払いは、税金に無駄遣いだけでなく、税務健全化にも不適切な手法です。

自治体の債務にならないような契約締結は可能ですので、その方法を選択することをお勧めします。。

<解説>

このような疑問は、PFI手法を導入しようとした時、財政担当と打ち合わせを始めると実際に出てくる疑問かもしれません。

少し古い資料になりますが、内閣府の「地方財政にかかわる最近の動き」を参考にしながら、この質問の回答について考えてみましょう。(出典は文末の脚注を参照)

①「起債制限比率算出にあたっては、PFI事業における債務負担行為にかかる支出のうち、施設整備費や用地取得費に相当するもの等公債費に準ずるものを起債制限比率計算の対象とする」②「実質公債費比率についても、平成19年6月14日付け総財地第150号総務省自治財政局地方債課長通知によると、PFIに関する経費は算入する」

となっています。

ここに記載されている「債務負担行為にかかる支出のうち、施設整備費や用地取得費に相当するもの等公債費に準ずるもの」および、「PFIに関する経費」とは何かを理解することが重要です。

これは、施設整備費や用地取得費を割賦払いで購入した場合に自治体のバランスシートにどのような影響を与えることになるかを考えてみればわかります。

2つのケースを考えてみましょう。

PFIという定義が明確になっていない中で使われているため、わかりにくくなっていますので、PFIという言葉を使わずに、次のようにケースを設定します。

ケース① 施設を割賦払いで購入する場合

ケース② 欲しい施設の内容を明示し、それを満たす施設を民間事業者に整備してもらい賃貸で施設を借りる場合

ケース①は、割賦契約で施設を購入する場合です。したがって、その施設を購入者である自治体が所有する場合は当然のことながら、民間に所有させてファイナンスリースで購入した場合であっても、バランスシート上、減価償却費を除いた施設整備費全額を債務として認識する必要があります。このように、割賦で施設を調達すると自治体の債務になることから、起債制限比率や、実質公債費比率の算定において対象になるという当たり前のことを総務省の通知は記載しているだけです。

それでは、ケース②の民間事業者が所有する施設に入居する場合はどうでしょう。

この場合は2つのパターンが考えられます。

どちらも、施設を整備するにあたり、民間投資が必要になりますが、民間事業者にしてみればそれをどうやって回収するかを問題にします。

最初のパターンは、利用者が30年間の賃貸契約を結んでくれて、途中で解約した場合には残りの期間の50%の賃料をペナルティとして支払ってくれる場合です。債務として計上するひつようがあるのは、残りの契約期間の賃料の50%です。

2つ目のパターンは、契約が1年間の事前通知によって解約できる場合です。この場合には、1年間の事前通知をして、一年後に新しいところに引っ越しをすることが出来るのであれば、特に債務を計上する必要がないことになります。

ケース②の場合は、いずれのパターンでも、ケース①で認識した施設整備費全額の債務にくらべると、債務が小さいか、債務のない形で契約が締結できることがわかります。

このような活用の仕方が出来る中で、簡単であるからという理由で割賦払いの契約を締結することは税金を無駄に使うだけでなく、財務状況を悪化させることに繋がりますのでさけなければなりません。

<参考資料>

「地方財政にかかわる最近の動き」http://www8.cao.go.jp/pfi/iinkai/shiryo_sb_20601.pdf

より抜粋

3.地方公共団体財政とPFI

<起債制限比率・実質公債費比率のPFIへの影響>

①起債制限比率・実質公債費比率のPFIに関する経費の算入について

平成12年3月29日付け自治画第67号自治事務次官通知によると、起債制限比率算出にあたっては、「PFI事業における債務負担行為に係る支出のうち、施設整備費や用地取得費に相当するもの等公債費に準ずるものを起債制限比率の計算の対象とする」ことになっている。実質公債費比率についても、平成19年6月14日付け総財地第150号総務省自治財政局地方債課長通知によると、PFIに関する経費は算入することになっている。

②起債制限比率・実質公債費比率のPFIに関する経費の算入の差異について 起債制限比率については平成12年度以降の債務負担行為に係る支出について算入するが、実質公債費比率ではそれ以前の債務負担行為に係る支出についても算入することになっている。

(参考)

1) 地方公共団体におけるPFI事業について(抄)(平成12年3月29日付け自治画第67号自治事務次官通知)

第2 PFI事業に係る債務負担行為の位置付け

PFI法に基づいて公共施設等の整備を行うために設定される債務負担行為は、効率的かつ効果的な公共施設等の整備のために設定されるものであり、「もっぱら財源調達の手段として設定する債務負担行為」(「債務負担行為の運用について」(昭和47年9月30日付け自治導第139号))に該当するものではないと解されること。

しかしながら、この場合においても財政の健全性を確保する必要があるので、PFI事業における債務負担行為に係る支出のうち、施設整備費や用地取得費に相当するもの等公債費に準ずるものを起債制限比率の計算の対象とするものであること。

2)実質公債費比率等について(抄)(平成19年6月14日付け総財地第150号総務省自治財政局地方債課長通知)

 

(1)エ「債務負担行為に基づく支出のうち公債費に準ずるもの」については、次のものを計上すること。

① 債務負担行為に基づく支出のうち法第5条に規定する地方債発行対象経費に相当するものとして省令で定めるもの(省令第7条)

PFI事業に係る支出のうち、公共施設又は公用施設の建設事業費及び公共用若しくは公用に供する土地又はその代替地としてあらかじめ取得する土地の購入費(当該土地に関する所有権以外の権利を取得するために要する経費を含む。以下「公共公用施設建設事業費」という。)に係るもの

3)地方公共団体の財政の健全化に関する法律(抄)

(定義)

第二条 この法律において、次の各号に掲げる用語の意義は、当該各号に定めるところによる。

(中略)

実質公債費比率 地方公共団体の地方財政法第五条の四第一項第二号に規定する地方債の元利償還金(以下この号において「地方債の元利償還金」という。)の額と同項第二号に規定する準元利償還金(以下この号において「準元利償還金」という。)の額との合算額から地方債の元利償還金又は準元利償還金の財源に充当することのできる特定の歳入に相当する金額と地方交付税法(昭和二十五年法律第二百十一号)の定めるところにより地方債の元利償還金及び準元利償還金に係る経費として普通交付税の額の算定に用いる基準財政需要額に算入される額として総務省令で定めるところにより算定した額(特別区にあっては、これに相当する額として総務大臣が定める額とする。以下この号及び次号において「算入公債費等の額」という。)との合算額を控除した額を標準財政規模の額から算入公債費等の額を控除した額で除して得た数値で当該年度前三年度内の各年度に係るものを合算したものの三分の一の数値

四 将来負担比率 地方公共団体のイからチまでに掲げる額の合算額がリからルまでに掲げる額の合算額を超える場合における当該超える額を当該年度の前年度の標準財政規模の額から算入公債費等の額を控除した額で除して得た数値

イ 当該年度の前年度末における一般会計等に係る地方債の現在高

当該年度の前年度末における地方自治法(昭和22年法律第67号)第214条に規定する債務負担行為(へに規定する設立法人以外の者のために債務を負担する行為を除く。)に基づく支出予定額(地方財政法第5条各号に規定する経費その他の政令で定める経費の支出に係るものとして総務省令で定めるところにより算定した額に限る。)

 

 

なぜ日本のPFIは割賦払いなのでしょうか?

日本のPFIが割賦払いになってしまったのには、いくつかの理由が考えられます。

1.CF偏重説

CF偏重説とは、現実論として、実際にキャッシュが足りないのだから、キャッシュが回る仕組みを考えたときに、一番わかりやすい方法であるので割賦払いを選択しただけで、そのキャッシュフローが、公的組織のバランスシートや行政コスト計算書にどのように反映されるのかをあまり認識していなかったのではないかというものです。

このように考えるのは、国のバランスシートを見れば、債務を増やすことになる割賦払いを増やせるような状況ではないにもかかわらず、割賦で施設を整備するPFIを増やそうという方針が示されているからです。

地方自治体を足すと、債務はGDPの200%を超えるといわれていますが、平成 23 年度の 国の財務書類(一般会計・特別会計)から国の債務超過額は約460兆円であることがわかります。(そもそも、この平成24年3月末に〆めた会計報告が公表されたのが平成25年3月29日と、どうして1年もかかったのか不思議です。たとえば、英国の2013年3月31日締めの国のバランスシートは、Annual Report and Accounts 2012-13として2013年7月に公表されています。まあ3ヶ月、長くても4ヶ月もあれば十分のはずです。)

このような理由で、最新のデータは使えませんが、以下のような財政状況であることがわかります。

http://www.mof.go.jp/budget/report/public_finance_fact_sheet/fy2011/national/2011_01a.pdf

① 平成23年の3月31日の国の資産は628兆円、2012年の同時期の資産が625兆円であったので、資産額は3兆円増えた。

② 一方、同じく2013年の3月31日の国の負債が1088兆円、2012年の同時期の負債が1042兆円であった

③ つまり、46兆円の借金を増やして、資産が2兆円しか増えなかった(債務超過の状態が差し引きして44兆円悪化した)ことがわかる。

④ 平成23年度の財源が95.7兆円、業務費用合計が139.1兆円、平成22年度の財源が92.2兆円、業務費用合計が133.8兆円
ここから、平成23年度は財源が前年度に比べて3.5兆円増えたものの業務費用が5.3兆円増えたことがわかる。(その他資産評価差額や為替換算差額等もありますが、特別損益要素なのでこの計算には含めていない。)

⑤ GDPを500兆円と概算すると、年度赤字が平成23年度で43兆円(GDPの8.6%)、平成22年度が42兆円(GDPの8.4%)となる。
これは、欧州の健全指標といわれる対GDP3.0%(マストリヒト条約の合意値)の2.8倍であり、赤字の回収が可能なレベルをはるかに上回っている。

PFIの仕組みは、単にキャッシュフローを改善するだけでなく、民間の債務による民間の投資を引き出し、公共のキャッシュフローの改善と、公共の財政状況の改善を同時に満たす仕組みです。
このような仕組みがあるのですから、どうしてキャッシュフロー改善に偏重した割賦支払い型PFIを増やすのかその理由を説明できません。

2. 勘違い説

私は1988年から2000年にかけて欧州に滞在していました。このとき日本から多くのPFI視察団が英国を訪れてきましたので、その対応に追われて大変でした。

使節団の数は極めて多く、会っても時間の無駄と思わせるようなケースが多かったようで、アポをとることが大変だった記憶があります。

そもそも、当時の英国にはPFIがいったい何なのかを明確に説明する資料がなく、適切なリスク配分とVFMの最適化を説明したブルーブックをいつも利用していたような記憶があります。

日本の視察団が、PFIを割賦払いだと思い込み、議員立法によって法律化の検討をしていた最中、英国では、PFIとは何であるのかを明確にするために、PFI契約の標準化(Standardisation of PFI Contract 通称SoPC(ソプシーと読む)のガイドラインの整備が行われていました。

このSoPCの”Issue0”、すなわち第1版が公表された時期と、日本のPFI法が成立した時期が同じであることから、日本のPFIは英国におけるPFIの実態がどのようなものであるのかを理解しないまま、視察によってPFIを施設整備費の割賦払いと勘違いして導入してしまったというものです。

3. 民間誘導説

もうひとつは、このようにPFIの実態が見えなかった中において、1980年代にアジア諸国でコンセッション事業に参画した日本のゼネコンや商社などが、PFIは施設整備の割賦払いであると断言したというものです。

割賦であれば、大規模修繕リスクをとる必要もないし、施設整備費のととりっぱぐれがないので、あらたなアウトプット仕様、モニタリング、業績連動の仕組等を導入する必要のない割賦払いを意図的にPFIと呼んで標準化してしまったというものです。

以上のように、なぜ日本のPFIが割賦払いなのかについての考察をしましたが、いずれも、しっくりと来る説明にはなっていません。

ただ、それがどのような経過で導入されたにしろ、間違って導入されたものであると考えます。

間違って導入したのであれば、訂正すればよいだけの話です。しかしながら、導入から13年以上経過しており、訂正できたにもかかわらず訂正は行われておらず、まだ、しばらくは訂正されないような気配です。

熊谷弘志事務所は、このような財政を悪化させることに繋がりかねない割賦払いのPFIを導入する支援は行いません。かわりに、本来のPFIのメリットか生かせる、財政の健全化と適切なリスク分担によって官民がWIN-WINとなれるような仕組みの構築をご支援します。

PFI事業を進める為のVFM算定方法を教えて下さい

質問1 VFMはいつ必要なのですか?

 PFI事業を実施する場合、自治体は特定事業選定を行います。
この特定事業選定においてVFMが必要となります。

質問2 特定事業って何ですか?

 特定事業は、PFI法第6条に記載されているように実施することが適切であると認める事業のことをさします。

 同法第5条(実施方針)に記載されているように、特定事業を選定したときは「特定事業の実施に関する方針(以下「実施方針」という。)」を公表します。

質問3 特定事業の実施方針には何を記載するのですか?

実施方針は、特定事業について、次の7つの事項を具体的に定めます。

************************************************************************
一 特定事業の選定に関する事項
二 民間事業者の募集及び選定に関する事項
三 民間事業者の責任の明確化等事業の適正かつ確実な実施の確保に関する事項
四 公共施設等の立地並びに規模及び配置に関する事項
五 事業契約の解釈について疑義が生じた場合における措置に関する事項
六 事業の継続が困難となった場合における措置に関する事項
七 法制上及び税制上の措置並びに財政上及び金融上の支援に関する事項
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質問4 特定事業の選定は、どのようにして行うのですか?

 実施方針の一番最初に記載されている特定事業の選定については、同法第4条3の一に次のように記載されています。

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「一 特定事業の選定については、公共施設等の整備等における公共性及び安全性を確保しつつ、事業に要する費用の縮減等資金の効率的使用、国民に対するサービスの提供における行政のかかわり方の改革、民間の事業機会の創出その他の成果がもたらされるようにするとともに、民間事業者の自主性を尊重すること。」

************************************************************************ つまり、特定事業の選定をする場合には、費用の縮減等資金の効率的な仕様等の効果がもたらされるようにする必要があります。

 内閣府のガイドラインには、特定事業の決定について次のように記載されています。

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 この決定は、当該事業をPFIで行うことにより、公共施設等の設計、建設、維持管理及び運営等が効率的かつ効果的に実施できるかどうか(VFM評価)が判断基準となります。
特定事業の選定を判断するVFM評価は 可能性調査等により既に検証したVFMに 、 その後の意見招請等により変更した内容を加味して行い、事前に財政課と協議の上、確定します。
また、特定事業の選定の結果については、その判断基準となったVFM評価と併せて速やかに公表します。
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質問5 VFMはどのようにして算定するのですか?

VFMは、公共が自ら実施する場合のLCC(ライフサイクルコスト)を基準値(PFI等の他の手法と比較する基準値という意味でPSC(Public Sector Comparator)公共セクター基準値と呼ぶ)とし、この値とPFI事業のLCCをNPV(現在価値)で比較することによって算定します。

特定事業を算定する場合にこのVFMを活用する目的は、従来の手法とは異なった手法で事業を実施できる可能性があるのかを模索し、民間事業者によるイノベーティブな手法で、従来公共が抱え込んでいたリスクコストをどれだけ民間側に移転することが出来るのかを算定する為です。

質問6 PSCはどのようにして算定するのですか?

PSCは、公共がどのようにして施設整備を行い運営するのかをPFIのLCCと比較できるように、キャッシュフローで作成します。

間接コストの算定の仕方については、詳細の説明はありませんが、市場化テストにおける官民のコスト比較が参考になります。 

いずれにせよ、このPSCは、自ら実施する場合のLCCを適切に積み上げる以外ありません。

質問7 PFIのLCCはどのようにして算定するのですか?

国内の多くのPFI事業のVFM算定において、最も大きな課題はこのPFIのLCCの算定にあります。

「内閣府のVFMに関するガイドライン」が算定をわかりにくくしている原因の1つです。

 PFI事業のLCCの算定条件の後半部分と、算定方法がわかりにくい部分です。

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「三 PFI事業音LCCの算定 1算定の前提条件」

(3) 民間事業者が、本来公共部門が必要とする施設(事業)に付帯的施設(事業)部分を加えて事業を実施する場合も想定され得るが、特定事業の選定段階におけるPFI事業のLCC算定に当たっては、原則として、本来公共部門が必要とする施設(事業)のみを想定する。

ただし、当該PFI事業に付帯的施設(事業)を組み合わせることが予見され、実施方針において、その内容が具体的に示されている場合は、当該付帯的施設(事業)を含めて全体事業費を計算した上で、本来の公共施設に相当する部分を取り出して、PFI事業のLCCを算定することとしても差し支えない。

(4) 民間事業者の選定段階におけるVFMの確認に当たっては、選定しようとしている民間事業者の事業計画に基づき、付帯的施設(事業)も含めた全体事業費の中から、本来の公共施設に相当する部分を取り出して、PFI事業のLCCを算定する。

2 算定方法

(1) 民間事業者が当該事業を行う場合の費用を、設計、建設、維持管理、運営の各段階ごとに推定し、積み上げ、その上で公共施設等の管理者等が事業期間全体を通じて負担する費用を算定する。

(2) 積み上げに当たっては、コンサルタント等の活用や類似事業に関する実態調査や市場調査を行う等して、算出根拠を明確にした上で、民間事業者の損益計画、資金収支計画等を各年度毎に想定し、計算する。なお、民間事業者が求める適正な利益、配当を織り込む必要があることに留意する。

(3) 間接コストについては、上記二3に準じて、PFI事業のLCCに算入する。
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上記(3)の但し書きの部分は混乱を生み出す可能性があります。

PSCは、公共事業のみの実施が前提ですので、PFIのLCCもPSCと比較する為には、公共事業部分のみで算定することが前提のはずです。

どのような提案となるのかは、民間事業者によって異なるはずです。付帯的施設であるならば、付帯的施設なしの提案もあるはずです。もし付帯的施設が必須なのであれば、それは付帯的施設も含めて要求している訳ですから、PSCにもPFIのLCCのどちらにもふくまれているはずです。

質問8 民間事業者提案部分はどう算定すれば良いのですか?

もちろん、ここに記載されているような、民間事業に活用するようなブレークスルー的なアイデアを入れることは事業提案の段階では必要になります。

そのため、特定事業を選定する上においては、あくまでもPSCと比較する部分のみを想定してVFMを算定し、民間事業を活用できる場合は、事業者選定時にプラスしてVFMが出るものと考えれば良いでしょう。

この区別は民間事業提案を提示させるときと評価するときにも活用する必要があります。

民間事業者には、①PSCと比較可能なPFI事業のLCC、②民間事業のLCC、③民間事業を組み込むことで生じる“①”への影響、④民間事業を組み込んだことによって変動するリスク、⑤“①”から“④”を反映させた最終的なPFI事業のLCCの提示を求めることが適切です。


質問9 ガイドラインのPFI事業のLCCの算定 2算定方法がわかりにくいのですが?

PFI事業のLCC算定のコスト積み上げが類似事業や市場調査となっており、ここに民間事業者のノウハウを活用したブレークスルーの要素が含まれていないことが、このガイドラインを分かりにくくしている原因です。

もっともよくありそうで、不適切なPFI事業のLCCの算定方法は、PSCを事業者に提示して、何パーセントのVFMが出そうかを事業者に聞く方法です。このようなヒアリングを根拠にしてVFMが出る可能性があるとする方法が多くとられているようです。

この手法は不適切な方法です。なぜなら、事業のコストは、事業の実施方法によって大きく変わってくるからです。具体的にどのような事業を行う必要があるのか、なぜ、そのようなPSC算定となったのか、その事業で求められる要求水準はどのようなものか等の提示なしには、事業者はコスト見積もりをすることは出来ないはずです。

このようなPFI事業の算定方法がまかり通っている理由は、発注者とそのコンサルタント側、および事業者側の両方にあります。

発注者とコンサルタント側の理由
1)この方法でVFMの算定をして今まで問題になっていないこと
2)もっとも、手間がかからずに、簡単にVFMの算定が出来ること
3)ガイドラインに抵触しない方法であること

民間事業者側の理由
1)コストが下がると答えさえすれば事業化が進むため(営業活動の一環)
2)コストが下がると答えても、事業参画のコミットメントではないこと
3)ガイドラインに抵触しない問い合わせのため答えざるを得ないこと

質問10 PFI事業のLCC算定はどうすれば良いのですか。

本当に民間ノウハウを活用して、ブレークスルーを組み込みたいのであれば、次のような手順が必要となるはずです。

ステップ1:既存の施設で事業を継続することの問題点の明確化
一般的には、既存の施設では問題があるため、施設の建て替えが必要になる場合にPFI手法が用いられます。そのため、新しい施設に組み込む既存の問題解決の手法が何かあるはずです。この事業実施目的を明確化することが必要です。

ステップ2:PSCで想定する問題解決の方法と達成したい結果の明確化
PSCは、具体的に達成したい結果を出す為の手段や手法をコスト算定したものです。従って、PSCを算定した方法以外にも解決方法はあるはずです。

PSCを算定した方法によってどのような結果を達成したいのか、そして、PSCの方法を活用しても解決できない問題点が何なのかを明確化する必要があります。この解決できない問題点がPSCに含まれる事業リスクになります。

ステップ3:PSCで達成したい結果を達成する別手法のLCC算定の検討
①発注者が抱える問題点、②結果としての要求水準とPSCを算定した方法、③PSCを算定した方法を利用しても発注者が抱え続けるリスク を提示した上で、事業者とイノベーティブな解決手法について対話し見積もりさせる必要があります。

このとき、導入したい方法があるけれども、コストが高すぎて導入できそうもない解決方法がある場合には、それも参考の為に示しておくことが重要です。

事業者の事業提案のアイデアまでは聞き出す必要はありませんが、ブレークスルーによる既存のリスクの回避やリスク軽減の可能性の検討は重要です。

事業者に求める結果(要求水準)をアウトプットで示し、PSCと異なるイノベーティブな方法を複数引き出すことで、民間同士の競争が適切に働くようになります。

また、間接コストをPSCに準じてPFI事業のLCCに導入することは適切ではありません。適切な間接コストは、民間事業者に委託する事業の実施形態についての前提条件を事業者と対話しながら策定した上で算定することが重要です。

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熊谷弘志事務所はPFI事業で官民とWIN-WINの関係を構築するための作業をご支援します。

民間のノウハウを引き出す為に必要な作業についてご相談のある方は、ご連絡ください。

PFI事業の民間事業者提案の受け入れおよびその評価手法について教えてください。

質問

民間事業者からPFI事業の提案があった場合”には、行政側で必ず検討し、その結果を提案者に遅滞なく通知しなければならなくなりました。でも、具体的にどのように検討して、どのような回答をしなければならないのかがわかりません。

海外のPFI/PPP事業における民間事業者の自発的提案の受付及びその評価手法はどのようになっていますか。その手法を日本に導入することはできるでしょうか。

回答

民間事業者による自発的な事業提案は、Unsolicited Proposal (直訳すると“要求されていない自発的提案”)と呼ばれ、文字通り求められていない提案を事業者が勝手に出すことを意味します。この仕組みは、世界銀行の分類によると、ボーナス方式、スイス・チャレンジ方式、ベスト&ファイナル・オファ一方式の3つに分類されます。

これらの3つの自発的提案の方式は、2段階の手統きで進められます。第l段階は手続き上の共通部分が多く、第2段階は、方式によって提案者のインセンティブや便益が異なります。具体的な仕組みの違いは、海外建設協会の2011年10−11月号に記載しています。

海外インフラにおける新たな取り組み を参照してください。

その手法を日本に導入することは出来ますが、それぞれの手法に応じて詳細のルールを決めたり、官側の体制もそれ相応に整えたりする必要がありますので留意が必要です。基本的には、好きなものにすれば良いのですが、ベスト&ファイナル・オファー方式がトレンドではないかと思います。内閣府の支援が必要なのは、このような分野ではないかと考えられます。

 

PFIとは施設整備費の割賦払いのことですか?

公共には、公債による資金調達という手法があるにもかかわらず、PFI法では、公債よりも資金調達コストの高い民間資金を活用して、施設整備費を割賦払いで支払うことが認められています。

この仕組みは、我が国特有のものであり、諸外国におけるPFIは基本的に施設整備費の割賦払いではありません。

PFIとは、従来公共が自らの資金によって施設を設計・建設・管理・運営していたものを、民間の資金調達能力を活用して民間に設備を整備させ、維持管理運営を行わせ、そのサービスを公共が購入する手法です。(サービス購入型PFIの基本的定義)

公共が施設を所有せずに、民間が提供する定量化可能なサービスを購入する形態にすることによって、以下のような財政健全化の効果を生み出すことができます。

⑴民間が調達した資金が返済できるように官民で事前に合意したキャッシュフローが成り立つため、施設の耐用年数全体にわたって支払いを平準化できること、
⑵施設の整備費は民間事業者が調達し施設を民間事業者が所有することから、公共が資金調達をする必要がない為、施設整備による公的債務の増加をさけることができること。
⑶当該施設が適切に利用できる状態であり続ける限りにおいて官民で合意した支払いが行われるが、施設が要求水準を満たさない状態になった場合には、要求を満たしていない部分の支払いをする必要がないこと。」

一方、割賦払い(日本版PFI)は、官民が合意した施設の整備費を、長期間にわたって支払い続ける手法です。従来の公共調達と異なり、資金調達を民間事業者が行うことから、公共のキャッシュフローは改善しますが、施設を民間に所有させるファイナンスリースの形態をとったとしても、施設整備費支払いの債務が生じるため、帰ってバランスシートにおける財政状況を悪化させることになります。

このような明確な違いがあるにもかかわらず、わが国のPFI市場においては、これらが混同されているのはなぜなのでしょうか。

これは、PFIが何であるかの定義が適切でないことが原因であると考えられます。

いくつかのPFIの定義を例にとって、それらが適切であるかどうかを検証してみよう。

誰もが参考にする内閣府のPFI推進室による定義は次のようになっています。

「PFI(Private Finance Initiative:プライベート・ファイナンス・イニシアティブ)」とは、公共施設等の建設、維持管理、運営等を民間の資金、経営能力及び技術的能力を活用して行う新しい手法です。

また、2011年のPFI改正が行われた際に出版されたPFIの専門書では次のように記載されています。

「PFIとは、Private Finance Initiativeの略称であり、公共事業や公共施設の建設、維持管理、運営権を民間企業にゆだね、その資金や経営ノウハウ、技術ノウハウを活用するという手法をさす。」

これらのどちらにも、民間に施設を所有させ、施設に生じる不具合リスクや大規模修繕リスクを移転する仕組みであるとか、公共が資産を講習することからサービス購入に転換する方法という要素が見当たりません。そのため、これらの定義では、民間事業者に設計施工及び維持管理運営を行わせさえすれば、割賦支払いができるような定義になっているのです。

わが国のPFI手法は、海外のPFI・PPP手法を理解する人にしてみれば、公債による資金調達よりも資金調達コストの高い民間資金を使って割賦払いをすることができる不思議な手法(税金の無駄遣いを許す手法)として認識されています。

日本のPFI手法に準拠するのではなく、新しいPPP手法を活用して官民連携の適切な仕組みを構築する考え方が重要です。