脱「日本版PFI」のその先へ:第4回 既存のガイドラインの課題 その1 PFI事業実施プロセスに関するガイドライン 

第3回は、ガイドライン改定案の概要について述べましたが、今回から、それぞれの既存のガイドラインにどのような課題があるのかを整理しようと考えています。

まず、PFI事業実施プロセスに関するガイドラインhttps://www8.cao.go.jp/pfi/hourei/guideline/pdf/process_guideline.pdfの課題についてみてみましょう。

このガイドラインは、特定事業の選定から民間事業者の募集、契約、事業の終了に至るまでの一連の手続を定めた実務上の指針です。しかし、その中身を詳細に読み解くと、本来PFIが目指すべき「民間企業のGoing Concernに基づくサービス調達」ではなく、従来の公共事業の延長線上にある「モノ調達(ハコモノ建設の割賦払い)」を前提としたプロセスが深く組み込まれてしまっていることが分かります。

具体的に、どのプロセスが「モノ調達」になってしまっているのか、3つの観点から課題を整理します。

課題1:VFM(Value For Money)算定が「経費の積み上げ」前提であること

サービス調達においては、提供される「サービスの価値(アウトプット)」に対して対価を支払う(ユニタリーペイメント)のが基本です。しかし、本ガイドラインの「ステップ3. 特定事業の評価・選定」におけるVFM算定の考え方を見ると、完全にモノ調達のアプローチとなっています。

  • ガイドラインでは、「VFMの算定はPSCとPFI事業のLCCの比較により行われるが、通常のPFI手続においては、PSC、PFI事業のLCCに関しては、対象事業の設計、建設等の各段階における経費を積み上げ、現在価値化することで算出されている。」(19p (4)VFM算定の考え方)と記載されている。

PFI事業のLCCについて建設費や維持管理費といった「インプットの経費を積み上げる」という前提に立っている時点で、事業の目的が「サービスの購入」ではなく「施設整備費と管理費の支払い」にすり替わっています。

この時点で、民間投資が前提となっていないことが明白であり、民間投資であれば、契約期間において行政が民間事業者に対して支払うサービス料金の累計額と、契約を終了した時点で民間事業者が投資した資産の残存価値の清算等の合計を現在価値に課することで算定される必要があります。

民間投資によって施設が整備され、事業運営期間にわたって、修繕及び改善が継続されて、資産価値がある施設を、契約終了と同時にタダで行政の資産にすることは合理的ではなく、既存の仕組みが成り立つのは、施設整備費を割賦払いすることが前提になっているからです。

課題2:「性能発注」のスコープが、サービスではなく「構造物・建築物」に限定されていること

PFIの大きなメリットは、民間事業者の創意工夫を引き出す「アウトプット発注」によって生み出されます。しかし、本ガイドラインが想定している性能発注は、事業の本質である「サービス水準(パフォーマンス)」に対する要求ではありません。

  • 「ステップ4. 民間事業者の募集、評価・選定」において、「提供されるべき公共サービスの水準を必要な限度で示すことを基本とし、構造物、建築物の具体的な仕様の特定については必要最小限にとどめるという、いわゆる性能発注の考え方を採ることが必要である」と記載されています。

ここで言及されている「性能」とは、前回の記事でも指摘した通り、耐震性や耐久性といった「建築物・構造物の性能」に焦点が当たってしまっています。

PFI事業においてサービス調達を行うにあたっては、本来、行政が要求すべき要求は、民間が提供する施設が持つ機能やそのパフォーマンスであるはずですが、プロセスガイドライン自体が「どのような建物を造るか」というモノ調達の視点に囚われているため、結果的に施設整備の仕様発注に近い実態を現場に生み出してしまっているのです。

課題3:予定価格の設定と契約管理が「建設工事の請負」であること

民間から「サービス」を購入するのであれば、施設が完成した後のサービス品質について確認することはできるものの、民間事業者が内部でどのような資機材をいくらで調達しているかを行政が細かく管理する必要はありません。しかし、本ガイドラインの予定価格設定と契約管理のプロセスは、完全に従来の公共工事の発注・監督スタイルです。

  • 予定価格の設定について、「賃金の上昇や資機材価格の高騰などを含む市場における労務及び資材等の最新の実勢価格を適切に反映させることが必要である」とされています。
  • さらに「ステップ5. 事業契約等の締結等」における管理者等の関与として、「建設工事を伴う事業契約においては、公共施設等の管理者等は、選定事業者から、事業費内訳書の提出や適正な労務費であることの確認を求めることができること」と定められています。

資機材の実勢価格をベースに予定価格を組み、工事の事業費内訳書や労務費を行政が直接確認・管理するというアプローチは、PFIを「長期の建設請負・維持管理委託契約」として扱っている何よりの証拠です。これでは、事業者は自立した継続企業(Going Concern)として自律的にサービスを提供するのではなく、行政の過度な監督下で工事と作業をこなすだけの下請け的ポジションに置かれてしまいます。

まとめ:プロセスの根本的な書き換えが必要

このように、「PFI事業実施プロセスに関するガイドライン」は、その手続の随所に「コストの積み上げ」「構造物の仕様」「工事費の管理」といったモノ調達(公共工事)のDNAが組み込まれています。

このプロセスを「サービス要求水準(SLA)の定義」「ユニタリーペイメントに基づく対価の評価」「モニタリングとインセンティブ設計」というサービス調達のDNAに書き換えない限り、脱「日本版PFI」を実現することは不可能です。

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