質問
よく日本版PFIという表現を聞きますが、日本版PFIと外国のPFIはどこがどのように違っているのでしょうか。
回答
日本のPFI手法は、PFI法が施設整備を目的としたものであり、公共の施設所有(割賦払いによるBTO手法)がみとめられていますが、外国のPFI手法は、民間がリスクをとる投資によって施設が整備され、公共はサービスを購入することが前提です。
キャッシュフローの観点から見ると支払いが平準化されている点においては共通していますが、民間資金を利用してもそれが公的債務の増大に繋がる手法(日本版PFI)と民間の債務であるため公的債務は増大しない手法(海外のPFI)の違いがあります。
PFI手法は英国で生まれた手法といわれます。
しかしながら、漠然とした表現(民間の資金とノウハウを活用してVFMを生み出す仕組みです)で説明されているだけで、実際にどのような仕組みであるのかの説明はあまり行われていません。
従って、このような説明を受けた人は、よくわからないけれど日本のPFIも英国のPFIも同じ仕組みなんだろうと考えてしまうのではないでしょうか。(PFI手法がどのような手法であるのかを政府が十分に理解していないことが内閣委員会の答弁でよくわかります。)
それでは、日本のPFIと英国のPFIには具体的にどのような違いがあるのでしょうか。(英国ではPF2手法(PFIの最後の文字”I”を”II”にバージョンアップしたとして名付けられた手法)の導入が進められていますが、基本的な考え方は同じであるため、ここでは、あえてPF2の詳細には触れません。)
内閣府のPFIについての説明
「PFIとは、公共事業を実施するための手法の一つです。
民間の資金と経営能力・技術力(ノウハウ)を活用し、公共施設等の設計・建設・改修・更新や維持管理・運営を行う公共事業の手法です。あくまで地方公共団体が発注者となり、公共事業として行うものであり、JRやNTTのような民営化とは違います。
正式名称を、Private-Finance-Initiative(プライベート・ファイナンス・イニシアチブ)といい、頭文字をとってPFIと呼ばれています。」
<重要なポイント>
ネットで調べると、いろいろなコンサルタントや、PFIを推進する組織がPFIについての定義をしていることがわかります。
しかしながら、上記の内閣府の定義と大きな違いはなく、民間の資金とノウハウを活用した公共施設の整備手法であるという表現が大半です。
共通しているのは、そこにどのような仕組みがあるのか、なぜ民間資金を使う必要があるのかについての説明がないことです。
これは、PFI法が、PFI手法を施設を整備するための手法(施設を割賦払いによって購入するための手法)として捉えていることがその原因ではないかと考えられます。
What is the Private Finance Initiative (PFI)? (英国のPPP Forumによる説明)
PFI is a procurement method where the private sector finances, builds and operates infrastructure and provides long term facilities management through long term concession agreements. These agreements transfer substantial risks to the private sector in return for payments over the concession life which is usually at least 25 years. Payment is only made if services are delivered according to the requirements of the concession agreement.
日本語訳:
PFIとはひとつの調達方法であり、民間セクターが資金調達し、建設し、インフラの運営を行い、長期的な施設管理を、長期的なコンセッション契約によって提供するものです。この合意によって、重要なリスクが民間に移転され、そのかわりに、普通は最低25年であるコンセッション期間にわたる支払いを得ることになります。支払いは、コンセッション契約の要求に基づいたサービスが提供された場合にのみ行われます。
<重要なポイント>
長期的なリスク移転の仕組みであって、サービス購入の仕組みであることです。割賦払いはサービス購入ではなく、資産購入時に債務を確定してしまうので、リスクを移転することは出来ません。
ググって見つけたサイトで、なかなか、うまく説明しているなと思ったのが、UKEssays.com のPFIについての説明です。
The PFI, known as Private Finance Initiative, is a type of Public Private Partnership procurement method implemented in UK construction industry in 1992. (Chinyio and Gameson, 2009) As an important part of Government’s strategy for delivering high quality public services, Private Finance Initiative requires the private financers to put its own capital at risk to deliver clear defined public projects for a long term period, ensuring the quality of the work delivered within the time and budget. (HM Treasury, 2009) OGC (2007, p.6) defined PFI as “Where the public sector contracts to purchase quality services, with defined outputs from the private sector on long term basis, and including maintaining or constructing the necessary infrastructure so as to take advantage of private management skills incentivised by having private finance at risk.”
日本語訳)
Private Finance Initiativeとして知られるPFIは、1992年に英国の建設業界で導入された官民連携による調達手法です。品質の高い公共サービスを提供するための政府の戦略の一部として、PFIは民間の投資家にリスクのある投資をさせ、長期にわたって明確に規定した公共事業を実施させ、限られた時間と予算内で仕事の品質を確実にするものです。OGC(政府の調達支援組織)はPFIを、「長期にわてって民間セクターから事前に規定した結果を伴うように、メンテナンスや必要なインフラの建設を含む形で、品質の高いサービスを購入するための契約を結ぶものであり、リスクをとる民間ファイナンンスを使うことによってインセンティブが与えられた民間の管理スキルをうまく活用できるようにしたもの」と定義しています。
<重要なポイント>
民間がリスクをとる投資をおこなうこと(民間の債務によって施設投資が行われることを意味する。)と事前に結果が規定された”高い品質のサービス”を購入するための仕組みであること、が明確に規定されています。
割賦をするとキャッシュフローが改善します。しかも単なる分割払いですので契約も簡単です。弁護士やコンサルに払う費用も少なくてすみます。これは、短期的なメリットかもしれませんが、長期的に財政健全化に反する手法を選択する理由にはなりません。
上記の情報は、Definition of PFI 等のワードでグーグル検索をすれば出てくるものです。パブリックドメイン情報ですので、知らないですますことは出来ません。PFIの担当者はこのことを十分にふまえて、議会での質問が出ても十分に対処できるようにしておく必要があります。
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