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長崎市立図書館のPFI事業の要求水準やモニタリング等をチェックした

先日紹介した武雄市の図書館情報のサイトに、BTO方式のPFI手法で整備された長崎市立図書館の契約書が公開されていることを同サイトの管理者で前田様より教えていただいたので、このPFI事業の委託内容が適切であるかどうかをチェックした。

長崎市立図書館は、図書館の施設整備と運営を任せた包括的なPFI案件として有名であることから私も訪問したことがあるが、ビジネスユースで利用するには不便な図書館であるという印象だった。それは、居心地は良いけれども、WiFiが整備されておらず、なぜか利用者用のLANのジャックが一つしか無いという、ビジネス目的で個人のPCを持ち込んでも使えない施設だからである。

ただ、長崎市のすばらしいところは、この図書館の基本計画から、事業者選定に至るまでの情報を長崎市立図書館整備運営事業としてまとめて公開していることである。

ボリューム的には、かなりのものであるので、テーマを⑴PFIとして民間資金を活用する意義があったのかと言う観点と、⑵要求水準書、モニタリング、支払メカニズムは適切に連動しているのかと言う観点からチェックをした。

1.PFI事業としては短すぎる契約期間

このPFI手法による図書館整備は、わが国の他のPFI事業と同様に割賦払いで施設を購入したものである。契約期間は17年5月13日から34年12月31日であるが、サービスの開始は20年4月1日なので、サービス提供期間は14年と9ヶ月となっている。

本来のPFI事業は、民間投資や民間リスクの民間による資金借入を利用して資金調達を行い、施設の耐用年数または投資が必要な大規模修繕が必要になるまでの期間(一般的には30年程度)にわたって委託するかわりに、施設の大規模修繕コスト変動リスクや、維持管理コスト変動リスクをとらせることで価値を生み出す方法である。つまり、従来公共がとっていた大規模修繕コストや維持管理コストの金額を、民間がライフサイクルで運営することによって削減し、民間による資金調達コストの増加分よりも付加価値を大きくする仕組みである。

しかしながら、本契約は15年間を下回る契約であることから、一般的に15年目に行われる大規模修繕のリスクも市がとらなければならなくなっている。そのため、事業者に大規模修繕コストを下げる必要がないことから、日々の適切な維持管理を継続し続けるインセンティブがなくなっている可能性がある。このような民間資金の使い方は、割賦支払による資金調達コストを増大させる為だけのものであることから、民間資金を活用する積極的な理由にはならない。

2.わかりにくい要求水準、モニタリング、支払及び減額の仕組みの連動性

要求水準と、モニタリング、支払料金の構成と減額の仕組みについては、称)崎市立図書館備運営入札公告の「設計・建設業務要求水準書」、「維持管理業務要求水準書」、「図書館運営業務要求水準書」と「モニタリング、サービス料減額及び契約終了に至る流れ」及び前述の「契約書」を参考にしながら内容を検証した。

これらの関連性は以下の観点から非常にわかりにくいだけでなく、今後問題が生じる可能性がある。

2−1 施設のBTO手法による契約期間と保証期間のずれ

この施設は、BTO手法によって市が所有する施設である。したがって、施設そのものの不具合については、一般的な製品保証の期間もしくは、瑕疵担保責任の期間であれば、製造業者に保証させることは出来るが、それ以上の責任を民間に要求することには無理がある。

実際、契約書には「甲による本件施設の完成検査」(31条)や「瑕疵担保責任」(42条)の条項があり、瑕疵の修補又は損害賠償の請求は2年以内であり、重大な過失の場合は10年間と通常の工事と同じである。つまり、10年すぎた施設に何ら問題が生じてもそれは、事業者責任にはならないことを意味している。

下記は「維持管理の要求水準書」のC−1建築物保守管理業務の施設に対する要求水準の例である。

施設の屋根部分の要求水準
施設の建具の要求水準
①     漏水が無いこと、
②     流布ドレン、樋等が詰まっていないこと。
③     金属部分が錆び、腐食していないこと。
④     仕上げ材の割れ、浮きがないこと。

① 可動部がスムーズに動くこと。
② 定められた水密性、気密性及び耐風圧性が保たれること。
③ ガラスが破損、ひび割れしていないこと。
④ 自動扉及び電動シャッターが正常に作動すること。
⑤ 開閉・施錠装置は、正常に作動すること。
⑥ 金属部分が錆び、腐食していないこと。
⑦ 変形、損傷がないこと。

これらは、初期の英国のリスク移転型PFI事業で用いられていた要求水準に似ているが、割賦払いにしてしまったため、契約期間全体を通した要求と事業者の保証との間に不整合がある。

減額の対象として、業務の要求水準未達に対し、改善通告したものの、改善がみられない事態に減額が発動することになっており、問題が起きた時の責任がわかりにくい。

例えば、前述の二つの要求水準は、市が所有する施設や建具に対してのものである。建具であれば、修補の請求は2年以内となっていることから、2年経過後に補修問題が生じた場合の責任は市がとる必要がある。また、重大な瑕疵であっても最長10年の瑕疵担保期間となっていることから、例えば10年の防水保証がすぎた場合には、事業者に屋根の漏水の責任をとらせることはできないと考える。

このような建具の要求水準は、建具の所有を民間にして、建具が利用できることのサービスに対して費用を支払う契約にしなければ機能しない。契約がそうなっていれば、建具が壊れたら、事業者はサービス料金が受け取れなくなる。従って事業者には、耐久性の高い建具を設置するか、適切な維持管理を行うかにより、建具の耐用年数をなるべく長くしようとするインセンティブが働くからである。

アウトプット仕様書の形をまねしても仕組みがそうなっていないので、要求と保証の整合性がとれず機能しないことがわかる。

2−2 曖昧な図書館の要求水準

図書館の要求水準も明確ではない。

要求水準は、悪いと判断する要因を明確にしておき、その対応の仕方に応じて官民双方が受け入れられる水準で設定すべきである。ところが、この悪いと判断する要因が見当たらない。

以下は要求水準書の例である。

業務項目
業務内容
業務水準
情報資料発注・受入
・発注方法・発注先の決定をする。
・選定内容が市によって決定されたもの
(定期購読を含む)を発注・購入する。
・発注管理をする。
・リクエスト情報資料で、市によって決
定されたものを発注する。
・寄贈情報資料で、市によって決定され
たものを受入する。
・司書資格を有する者が担当する。
・購入が決定された情報資料は2 日以内
に発注を行なう。
・原則として、発注から 1 週間以内に
納品されるよう、適切に管理する。
雑誌・新聞購入・管理
・配架

・定期刊行物等を選定する。
・その他、発注、受入、納品管理等業務
は、「D-4-3 情報資料発注業務」と同様
に行なう。
・配架業務を行う。
・選定は 1 年に 1 度行なう。
分類・登録・装備
・受入情報資料の分類を行なう。
・搬入されてきた情報資料に磁気テープ又
は IC タグ、バーコード、フィルムを貼る。
・装備完了した情報資料をマーク登録し、
目録を作成する。
・配架場所を変更した情報資料のデータの
変更
を行なう。

・「長崎市立図書館運営方針」の「情報
資料整備方針」に沿った分類とする。
・視聴覚資料及び定期刊行物は選定事業
者独自の分類による。
・司書資格を有する職員が担当する。
・データの入力は正確にする。
・民間MARCの特徴を熟知した上で、
本図書館の利用に合わせて活用する。
・IC タグを導入する場合には、図書セ
ンターからの既存情報資料約 5 万点へ
の装備と公民館等図書室の情報資料の配
本、相互利用等に不都合が生じないよう
にすること。

情報資料発注・受け入れの業務水準だけをみてみても、要求している水準がわからない。

具体的に言うと、まずこの業務を司書資格を有するものが担当することは要求水準ではなく条件である。発注に熟練した人であれば、司書資格を持っていなくても適切な発注が出来るはずである。

次の2番目からが要求水準に該当すると考えられるが、購入が決定された資料を発注する期限がいつからカウントされるのかがわからない。事業者としては、決定された図書を発注するように指示された時からでなければ責任ある管理が出来ないはずだ。

さらに、一旦購入が決定されたものを、管理していくことの基準が示されていない。たとえば、1週間以内に納品できない資料や、定期刊行物の収集のルールはどうすれば良いのかが記載されていないし、納品されなかった場合の対処の水準も示されていない。

2−3 適切な図書館の要求水準の設定の仕方

ちなみに、適切な要求水準が記載されていると考えられるジェトロビジネスライブラリー(JBL)では、次のようになっている。

JBLは専門図書館である為、専門職員と民間委託業者の関係を公共図書館に当てはめることは出来ないかもしれないが、構成からみてみよう。

JBLは世界中の貿易関連情報を収集している特殊なライブラリーであり、世界中のジェトロ事務所で収集する情報を管理し、ジェトロ本体の貿易支援サービスと連携させる必要があるため、外部委託した業務は非常に限られている。

① 資料整理業務、 ② 資料管理業務、 ③ 閲覧・利用者サービス、 ④ 付随する業務 の4業務のみである。

正規職員が継続して管理を続ける必要があると判断した部分については、外部に情報は開示していないが、資料を選択したり、発注したりする部分は委託をしていないことが、これらの民間に委託している内容をみるとわかる。

長崎市立図書館の「⑴情報資料発注・受入」「⑵雑誌・新聞購入・管理・配架」「⑶分類・登録・装備」で記載されている部分のうち、発注を除いた部分を、JBLでは、① 資料整理業務、 ② 資料管理業務の二つの項目に分けて整理している。① 資料整理業務 は、イ 目録作成、 ロ 定期刊行物受入、ハ 資料装備、ニ 資料差し替え、ホ 製本・補修 の5業務に分けて、 ② 資料管理業務は、 イ 資料配架、ロ 資料展示、ハ 閉架書庫管理、ニ 蔵書点検、ホ 資料移管、ヘ資料処分 の6業務に分けて、それぞれの業務目的と業務内容が示されており、業務内容の中には、作業が適正に行われていると判断する要求水準が記載されている。

例えば配架についての整理の仕方は次のようになっている。

②資料管理業務の中のイ資料配架は、 (1)新規配架、(2)配架修正 (3)書架調整 (4)各種掲示物の作成・修正 と配架に関連するアクティビティーを4つに分類して、それぞれの要求水準の設定を行っている。

この中で、新規配架がどのようになっているかをみると、その対象は① 新聞 ② 雑誌 ③ 図書 の3種類があり、受け入れから配架までに要求される時間がそれぞれの対象毎に異なっていることがわかる。

また、未着資料については、発注から受け入れまでの期間は、発注時に職員が管理しており、事業者は受け入れたものを報告している。(長崎市の発注から納品までを1週間にするという要求水準は達成不能であると考えられる。)

但し、継続資料の未着については、発注した職員が検査するのではなく、配架修正において確認することとしている。定期刊行物については全資料を対象とした未着調査を休館日に行い、結果を機構に報告すること。未着があれば国内の発行元または取扱書店に当日中に連絡すること。海外事務所経由で収集資料の未着は当日中に機構に報告することを要求している。

このように、具体的に委託する資料とそれに対する要求水準を明確に提示する為、その要求水準を達成する為のスタッフ数が適切に算定できるようになる。また、ここで示している要求水準は、JBLが提示した案である。そのため、上記の要求を満たすことが困難であると言う事業者意見が、「ビジネスライブラリー運営業務民間競争入札実施要項(案)に対するご意見」で示されており、事業者の意見を反映した要求水準の再設定が行われている。

要求水準書を事前に開示して、要求が適切でないと言う指摘を受けた場合には、適切になるように要求水準を修正することが重要である。ところが、要求水準が示されていない場合には、事業者もなんとコメントしていいかわからず、そのままになってしまう可能性があるので留意しなければならない。

2−4 不明確なモニタリングの仕組み

長崎市立図書館では、要求が満たされているかどうかを確認するモニタリングは、日常モニタリング、月次モニタリング、随時モニタリング、利用者アンケートの4つによって構成されている。

民間にリスクを移転する仕組みとして最も重要であり、コストも発生するのがこのモニタリングであるが、「モニタリング、サービス料減額及び契約終了に至る流れ」には、このモニタリングを行う為の①モニタリング組織、 ②モニタリング時期、 ③モニタリング手続、 ④モニタリング項目 、⑤事態1にかかる要求水準達成判断基準 、⑥事態2及び3にかかる重大な支障があると認められる事態の判断基準は、別途作成することになっており、この部分で満足のいく提案を事業者から生えられていないのではないかと危惧する。

2−5 適切なモニタリングの仕方

適切なモニタリングを行う為には、前述したような適切な要求水準を設定する必要がある。

同じく、適切なモニタリングの仕組みが記載されていると考えられるJBLでは、次のようになっている。

ここでは二つのツールを活用してモニタリングを行っている。一つは要求水準確認書であり、もう一つは業務確認表である。要求が明確に記載されている為、具体的に当日何を行ったかと言う業務日報の要求はしていない。報告しなければならないことは、業務確認表によって、満たされていない要求水準が無かったかどうかである。

適切なサービスが行われ、問題が無かった場合には、この業務確認表を1枚提出すれば、基本的にはそれ以上の報告をする必要は無い。

しかしながら、要求水準を満たさない事象が発生した場合には、その発生原因を特定したり、具体的にどのような対応を行ったのかを示したり、要求水準が正常な状態に戻るまで、この報告を継続して行わなければならないようになっている。

このように、発注者側も、事業者側も、事前に達成しなければならない要求水準を明確化し、達成できない事象が生じた場合に、その原因に立ち返って、課題をつぶしていくと言うプロセスを組み込んでいるため、サービス水準が継続して向上する仕組みになっている。

2.6 不適切なリスク分担

長崎市立図書館では、要求水準が明確に示されておらず、かつ、モニタリングについても実態がどのようなものなのかが、わからないまま、事業者の選定が行われたが、減額の仕組みとして非常に厳しいものが事業者に課されている。わたしは、これはやり過ぎであると考えている。

事態1
表1に示す業務の要求水準未達に対し、改善通告したものの、
改善がみられない事態。
当該業務月額の10%の減額
事態2

次の事由等から生じる、重大な支障があると認められる事態。
①業務の放棄
②故意による市との長期連絡不通
③虚偽の報告
維持管理費相当分、運営費相当分、
情報資料購入費の50%
事態3

次に示す、明らかに重大な支障があると認められる事態。
①人身事故・物損に関する事態の発生
②個人情報の漏洩
③社会的信用の失墜
維持管理費相当分、運営費相当分、
情報資料購入費の50%

事態1については、前述の通り要求水準が明確に設定されていない訳であるので、改善通告がそもそも機能するのかどうかがわからない。事業者としては、そこを指摘すれば良い訳であるから、多分改善通告そのものが成立しないので減額は無いであろうと考えられる。

事態2と事態3については、これは明らかに、何を意図して設定したのものなのか理解できない。維持管理比や運営費情報資料費とうに占める人件費や資料費の実費の割合は相当高いものと考えられるので、これらを50%支払わないと言うことは、事業者に契約解約を通告することと同様である。

しかも、事態3の①人身事故・物損に関する事態の発生 、②個人情報の漏洩、 ③社会的信用の失墜 については、本当に事業者の責任で発生するものだけに限定できないと考えられる。このような、どのような原因で発生するかわからない、人身事故や、物損に関する事態が発生した場合に、それらの事象そのものとの明確な関連性がない可能性の高い維持管理費相当分、運営費相当分、情報資料購入費の50%の支払を減額すると言う要求水準は理不尽なものであり、合理性に欠けている。

もちろんこの減額については、保険でカバーできる可能性はあるが、このような問題が発生する可能性のある要因を明確化して、その要因が発生した場合には、一定の期間内にその要因を取り除くことが、善良な運営者に求められることであるはずだ。

原因の如何に関わらず、民間の料金を差し引くというのは適切なリスク分担の観点からも、適切な競争の観点からも適切ではない。特に、このような要求をする発注者の仕事はリスクが高いので応募しないという事業者も出てくることから、競争が適正に働かない可能性がある。

3.最後に

官民連携の業務と言う意識を持って要求水準の設定を行わないとこのような状態になってしまう可能性があるので留意しなければならない。

なお、前述したJBLの様な要求水準を適切に設定する為には、業務の方向性策定分析AS-IS分析TO-BE分析FIT&GAP分析等を行った上で、適切な業務分担と要求水準の設定を行っていくと言うプロセスを踏むことが望ましいと考える。作業を効率的に行う為のツールとなるテンプレートがあるので、活用の仕方等については、アドバイザリーサービスとしてご依頼いただきたい。

お問い合わせは、こちらまで。

神奈川県「衛生研究所」のPFI導入に関する検証結果をチェックした

本文: 県有施設のPFI導入に係る効果等に関する検証結果

添付資料:同報告書 巻末参考資料

本報告書の大きな問題点は、本文だけを見て巻末参考資料の詳細を見ないと、この報告書の問題点が見えないところにある。

神奈川県立衛生研究所のPFI事業の評価

 1. 客観性に欠ける評価結果

衛生研究所の調査結果は、添付資料から確認すると以下の通りである。この添付資料の評価部分に基づいて本文が策定されているため、本文だけを見る限りにおいては、問題がなさそうに見えるが、本来の評価はどうあるべきかを考えると改善が必要な問題点があることがわかる。

1−① 清潔さ/衛生状況

設問:施設は常に清潔さが感じられますか。
評価選択肢
割合
A 十分清潔
94%
B 十分とは言えないがおおむね清潔
0%
C 清潔に感じられない場所があった
6%

評価:Aを選んだ人の割合は94%となっており、概して清潔な環境が維持されていると考えられる。

本来の評価:Cが全体の6%あることは施設の性格上、許容できない。場所の特定と改善対応が至急必要である。

衛生研究所の施設特性から考えると、たとえば清潔さ・衛生状況として全体の6%が清潔に感じられない場所があったと指摘していることは明らかに許容範囲を超えており、何らかの問題の発生に繋がる可能性がある。一方で、清潔さについての基準が明確化されていない可能性も高い。

清潔でない状態が引き起こす事象の分析を行った上で、エリアに応じてどのような要求水準を設定するのかについて明確化した上で、利用者がみつけた非衛生的な部分に対しての対応に関するモニタリングの仕組みを構築する必要があると考えられる。

衛生研究所で事故を引き起こす可能性のあるような運営しか出来ない事業者であれば、交代してもらう必要もあるため、この要求水準の設定には十分な検討が必要であると考えられる。

1−② 施設/設備案内

設問:施設を利用するにあたって、わかりやすい案内表示さされていますか。(案内板出入り口表示等)
評価選択肢
割合
Aわかりやすい
0%
B普通
94%
Cわかりにくい
6%

評価:Bを選んだ人の割合は94%なっており、概して利用者にとって利便性のある案内表示がされていると考えられる

本来の評価:Aが0%であるのに対して、Cが6%である。分かりにくい場所の特定と改善対応が必要である。

普通が94%であることのみを記載しているが、わかりやすいと考える人とわかりにくいと考える人の割合を比較した場合に、わかりにくいと考える人の方が多いというのは、明らかにどこかに問題があるものと考えられる。

分かりにくい場所があることによって、何らかの運営上の問題が生じている可能性もあり、分かりにくい場所の特定と改善対応が必要であることは明らかである。

1−③ 温度管理等

設問:施設を利用するにあたり、温度管理や寄稿対策が適切にされていて、快適に利用できますか
評価選択肢
割合
A 十分快適に利用できる
6%
B 普通
72%
C 快適でない
22%

評価:A及びBを選んだ人の割合は78%となっており、概して利用者が過ごしやすいよう気候対策がとられていると考えられる。

本来の評価:Cが22%と全体の2割を超えており許容範囲ではない。快適でない場所の特定と改善対応が至急必要である。

この評価はお手盛りの評価と言われても仕方がない。全体の2割以上が快適でないと評価しているのは、許容範囲を遥かに超えている状態である。

1−④ 施設/設備設計

設問:施設内の各設備備品等は利用しやすいものになっていますか(トイレ,音響設備,展示パネル,事務機器等)
評価選択肢
割合
A 十分利用しやすい
22%
B 普通
67%
C 利用しにくい
11%

評価:A及びBを選んだ人の割合は89%となっており、概して利用者が過ごしやすいよう施設・設備の設計がされていると考えられる。

本来の評価:Cが11%と全体の1割を超えている。利用しにくい部分の特定と改善対応が必要である。

そもそも快適でない設計がなされていた可能性もあるため、オペレーション上での対応のみで、この課題を解決できる可能性があるかどうかは調査をしてみないとわからない。しかしながら、すくなくとも、快適でない場所の特定及び、改善対応については至急検討する必要があると考えられる。

利用しにくいと感じているものが全体の10%以上いることについても、許容範囲を超えているのではないだろうか。

利用しにくい形で、設計。設備設計がそもそも行われた可能性もあるため、オペレーション上での対応のみで、この課題を解決できる可能性があるかどうかは調査をしてみないとわからない。但し、すくなくとも、快適でない場所の特定及び、改善対応については至急検討する必要があると考えられる。

1−⑤ サービス全般

設問:そのたサービス全般について、特段にまんぞくあるいは不満に感じる点がありますか
評価選択肢
割合
A 特段に満足できる点があった。
22%
B 特段不満足な点があった
6%
C 特になし
72%

評価:Aを選んだ人の割合は22%であるのに対して、Bを選んだ人の割合は6%となっており、サービス全般について概して利用者に快く受け止められていると考えられる。

本来の評価:Bが6%いる。具体的に利用しにくい点を特定し、その原因が何であるのかを明確化した上で、改善対応が必要である。

満足できる人と、満足できない人の割合を比較することがそもそも合理的ではない。本来ならば、全ての利用者が満足できると答えるべきであったからである。6%が特段不満足な点を訴えている以上、その原因を明確化した上で、改善対応が必要なことは明らかである。

2. 不適切であっても対応をしていない背景

PFI手法とは、本来ならば、このようなサービスの品質が低下することのリスクを民間に移転するものである。しかしながら実際には品質の改善を要求していない。この背景には、個別の課題で指摘されている要求水準の不明確性があるものと考えられる。

ここでは、衛生研究所を1つの事例として取り上げたが、特にこの手の種類の施設においては、病気の感染等の可能性が考えられるのでほうチュすることは適切ではない。改善方法としては、要求水準の適切な設定が効果的であろう。衛生研究所であれば、英国の病院PFI等の要求水準を参考にすると良い。適切な要求水準の設定を行い、水準を満たさない状態が発生した場合、気がついてから要求水準に戻すまでの修復許容時間を設定することが重要である。

このような要求水準に対して適切に対応できない事業者に対しては、支払いの減額等のペナルティや、契約の解除等の対処が必要となる。

事故が起きてから、ペナルティを与えるのではなく、事故を引き越す可能性のある悪いオペレーションがおこなわれた場合に、ペナルティが発動するような仕組みにすることが重要である。

 

神奈川県「保健福祉大学」のPFI導入に関する検証結果をチェックした

衛生研究所⑴、近代美術館⑵に続いて、保健福祉大学の評価についてみてみよう。

本文: 県有施設のPFI導入に係る効果等に関する検証結果

添付資料:同報告書 巻末参考資料

本報告書の大きな問題点は、本文だけを見て巻末参考資料の詳細を見ないと、この報告書の問題点が見えないところにある。

調査結果は添付資料から確認すると以下の通りである。この添付資料の評価部分に基づいて本文が策定されているため、本文だけを見る限りにおいては、問題がなさそうに見えるが、本来の評価はどうあるべきかを考えると改善が必要な問題点があることがわかる。

神奈川県立保険福祉大学のPFI事業の評価

1.学生及び教職員への既往アンケート

1−① 清潔さ・温度管理等

設問:清掃状況、清潔感、空調の快適さ、空気の清浄具合、騒音、床の歩きやすさ、主観的な気持ちの良さ等といった
基準から「快適性」についての満足度を5段階で回答。
評価選択肢
割合
5 良い
31%
4
38%
3 普通
27%
2
3%
1 不満
1%

評価 快適性に関して、満足度5及び満足度4を選んだ人の割合は約69%で、満足度3(普通)を含むと96%となっており、概して快適な環境が維持されていると考えられる。

本来の評価:満足度3(普通)を下回ると評価するものが4%いる。2および1(不満)と評価したものの内容について確認する必要がある。普通を上回ると評価した4と5の合計が69%であり、普通が27%と高いことから、概して清潔な環境が維持されているものの改善の余地はあると考えられる。

1−② 施設・設備案内/施設・設備設計

設問:使いやすいスペースか、備品類は使いやすいか、安全上の不安はないか等と行った基準から「機能性」について
の満足度を5段階で回答。
評価選択肢
割合
5 良い
27%
4
37%
3 普通
31%
2
4%
1 不満
1%

評価 機能性に関して、満足度5及び満足度4を選んだ人の割合は約64%で、満足度3(普通)を含むと95%となっており、概して機能性及び利便性のある環境が維持されていると考えられる。

本来の評価:満足度3(普通)を下回ると評価するものが5%いる。2および1(不満)と評価したものの内容について確認する必要がある。普通を上回ると評価した4と5の合計が64%であり、普通が31%と高いことから、概して清潔な環境が維持されているものの改善の余地はあると考えられる。

2.在勤する県職員へのアンケート

2−① 清潔さ/温度管理等

設問:施設は常に清潔さが感じられますか。
評価選択肢
割合
A 十分清潔
81%
B 十分とは言えないがおおむね清潔
15%
C 清潔に感じられない場所があった
4%

評価:A及びBを選んだ人の割合は96%となっており、概して清潔な環境が維持されていると考えられる。

本来の評価:Cが4%いることから、場所の特定と改善対応が必要である。概ね清潔な環境が維持されていると考えられるが、Bが15%いることから改善の余地はある。

2−② 施設/設備案内

設問:施設を利用するにあたって、わかりやすい案内表示さされていますか。(案内板出入り口表示等)
評価選択肢
割合
Aわかりやすい
29%
B普通
58%
Cわかりにくい
38%

評価:A及びBを選んだ人の割合は87%なっており、概して利用者にとって利便性のある案内表示がされていると考えられる

本来の評価: Cが38%と、分かりにくいと評価するものが全体の3分の1以上いることがわかる。場所の特定と改善対応が至急必要である。

この評価は普通ではない。評価した人の3分の1以上がわかりにくいと言っていることを「概して利用者にとって利便性のある案内表示がされている」という評価に結びつけてはならない。それは、このような評価を行うと、他の施設でもこの程度で良いのかという話になるからである。

分かりにくい場所があることによって、何らかの運営上の問題が生じている可能性もあり、分かりにくい場所の特定と改善対応が至急必要である。

2−③ 温度管理等

設問:施設を利用するにあたり、温度管理や寄稿対策が適切にされていて、快適に利用できますか
評価選択肢
割合
A 十分快適に利用できる
24%
B 普通
52%
C 快適でない
24%

評価: A及びBを選んだ人の割合は76%となっており、概して利用者が過ごしやすいよう気候対策がとられていると考えられる。

本来の評価: この評価もCが24%と、分かりにくいと評価するものが全体の約4分の1いることがわかる。場所の特定と改善対応が至急必要である。

この評価も普通ではない。施設設備案内ほどではないが、評価した人の約4分の1が快適でないと言っていることを「概して利用者が過ごしやすいよう気候対策がとられている」という評価に結びつけてはならない。それは、上記と同様に、このような評価を行うと、他の施設でもこの程度で良いのかという話になるからである。

快適でない場所があることによって、何らかの運営上の問題が生じている可能性もあり、快適でない場所の特定と改善対応が必要である。

2−④ 施設/設備設計

設問:施設内の各設備備品等は利用しやすいものになっていますか(トイレ,音響設備,展示パネル,事務機器等)
評価選択肢
割合
A 十分利用しやすい
24%
B 普通
65%
C 利用しにくい
11%

評価: A及びBを選んだ人の割合は89%となっており、概して利用者が過ごしやすいよう施設・設備の設計がされていると考えられる。

本来の評価:Cが11%と全体の10%を超えており、前の2項目ほどではないが、許容範囲を超えていると考えられる。利用しにくい部分の特定と改善対応が必要である。

10%以上の人が利用しにくいと言っているのを、許容範囲と捉えるかどうかであるが、民間事業者であれば、95%から98%が普通以上と評価しているのであれば、概ね良いと言えるのではないだろうか。

2−⑤ サービス全般

設問:そのたサービス全般について、特段にまんぞくあるいは不満に感じる点がありますか
評価選択肢
割合
A 特段に満足できる点があった。
36%
B 特段不満足な点があった
9%
C 特になし
55%

評価:Aを選んだ人の割合は36%であるのに対して、Bを選んだ人の割合は9%となっており、概して利用者にとってサービス全般が受け入れられていると考えられる。

本来の評価:Aが36%、Bが9%と、AがBの4倍であり、満足できる点があったと言う人が多かったことがわかる。ただし、Bの9%は、決して少ない値ではないことから、改善の余地はまだあると考えられる。

3.不適切であっても対応をしていない背景

評価が甘いと言わざるを得ない。

このような要求水準に対して適切に対応できない事業者に対しては、支払いの減額等のペナルティや、契約の解除等の対処が必要である。

多分、満足のいく要求をすると事業者から追加要求されるのでコストアップになると言われるのかが嫌なため、要求していない可能性もある。

コストは下がったとしても、このように評価が悪いのであれば、VFMがでているとは言えないかもしれない。

また、あまりにも主観的な評価だけでは、改善点が見えてこないので、このような調査を行う際には、悪い点は具体的に指摘してもらって改善活動に活用できるようにしておく必要がある。

武雄市の図書館とTSUTAYAのコラボレーションについてチェックした

今話題の武雄市の図書館。すばらしいという記事がたくさんある一方で、批判もそれなりに出ているようだ。

さて、実際に訪問した人の意見を見る限りにおいてはすばらしいという評価が非常に多い図書館ではあるが、この図書館を官民連携が理想的に行われた図書館事例として捉えることは適切なのであろうか。

武雄市の図書館の情報は「武雄市問題文書館 資料室」http://www.nantoka.com/~kei/TakeoReferences/ を参照した。このサイトで開示されている「武雄市図書館。歴史資料館の管理運営に関する協定書」を参考に、武雄市の図書館と蔦屋のコラボレーションは適切であるのかについて検証してみた.このサイトは武雄市の図書館に対して批判的なサイトであるが、引用している資料は客観性の高い資料として信頼できると考えられる。

実際の運営においては、スタッフが活用する運営マニュアルのようなものが存在していると考えられるが、それらのマニュアルのベースとなっているのは、武雄市と蔦屋の協定書「武雄市図書館。歴史資料館の管理運営に関する協定書」であり、そこに含まれている「武雄市図書館・歴史資料館管理業務仕様書」である。

この協定書を見る限りにおいて、サービス水準について発注者と事業者間でもめ事が生じないのかが気になる。なぜなら、要求内容を評価する基準が明確でないにも関わらず、基準を満たさない場合は指定を取り消すとなっているからである。

1. 協定書と仕様書の関係

協定書において業務に関連する部分として4つの重要な項目が記載されている。

1−1.管理業務の内容は、以下の3つとした上で、別紙「仕様書」に定める通りとしていること

①  図書館/歴史資料館の利用に関すること(歴史資料に関するものは除く)

②   図書館、歴史資料館の維持管理に関すること

③   その他図書館、歴史資料館の管理運営に関して黄河必要と認める業務

1−2.管理物件は、財産台帳及び物品台帳に記載したものとして善管注意義務が付されていること。

1−3.指定管理者の責務は次の3つであること

①      関係法令及び協定に従い、真義に沿った誠実な履行と、円滑な運営を求められていること。

②      利用者の被災に対する第1次責任を有しているものの、最終責任は武雄市にあること。

③      継続が困難になった場合やその恐れがある場合の報告義務があること。最終責任は②と同じ。

1−4.報告内容は次の4つであること

①      管理業務の実施状況

②      図書館/歴史資料館の利用状況

③      管理経費の収支決算

④      その他武雄市が必要と認める事項

2. 仕様書の記載内容

2−1 明確に記載されていない要求水準

① 要求項目は記載されているが、具体的な要求水準は記載されておらず、適切に行う、積極的に行う、万全を期する、心がけること、努めること、支障がないようにすること等の漠然とした要求がなされている

② 利用者満足度調査と教育委員会モニタリングが行われることが記載されているが、

ア)何を基準にどのような調査やモニタリングが行われるのか、

イ)調査やモニタリングの具体的な頻度、

ウ)調査やモニタリングの内容についての合意が行われるのかどうか

 — についての記載がない

2−2 指定の取り消しが市の主観的な判断で行われる可能性があること

① 市が必要と認める場合は、業務改善勧告、是正指示がだされることになっているが、要求水準が明確に設定されていない中で、何を根拠に業務改善勧告や是正指示が出されるのかがわからない。このような規定において他の自治体でしばしば起きていることは、業務改善勧告や是正指示を出そうとすると、事業者からそれは追加指示であると指摘され、追加費用を要求されることである。もし、問題が生じたとした場合は、最初に要求を明確に示していない武雄市に問題があったと考えることが妥当である。

② そもそも、このような、改善要求で合意が得られるかどうかの問題はあるが、改善が見られない場合及び業務がこの仕様書で示す管理業務の基準を満たしていないと判断した場合は指定が取り消されることになっている。これは業務改善勧告や、是正指示とも関連してくるので、具体的にどのようになっているのかを確認する必要がある。

3 仕様書に記載されている管理の基準

3−1 仕様書に記載されている管理の基準の内容は以下の9項目であるが、業務そのものについての基準はどこにも記載されたていない。

(1)開館時間及び休刊日

(2)人員配置の基準

(3)選定基準

(4)仕様の許可の基準

(5)清掃に関する詳細事項

(6)安全に関する事項

(7)個人情報の取り扱いに関する事項

(8)帳簿等の備置及び文章等の管理

(9)その他 (駐車場と法令)

 

4. 望ましい仕様書

本来作成されなければならなかった望ましい仕様書は、明確な業務遂行指針に基づいて以下の5項目が連動しているものであった。

① 業務内容

② それぞれの業務の要求水準および業績指標、

③ その要求水準および業績指標のモニタリング手法

④ それぞれの水準や指標が満たされなかった場合の修復許容時間

⑤ 以上の4項目で修復許容時間までに対応できなかった場合のペナルティと支払いメカニズム

これまでにも、いろいろなPFI事業、指定管理者事業、市場化テスト事業等が実施されているが、仕様書の要求水準部分に対して払われている注意が少ないことに驚かされる。

今回の武雄市図書館が、市長と蔦屋のコラボレーションで結果的にたまたまうまく行ったかもしれないが、問題が生じた場合には、既存の協定書では問題を解決することは出来ない。

特に、今回の武雄市図書館のリニューアルには、武雄市が4億5000万円、TSUTAYAを運営するカルチュア・コンビニエンス・クラブが3億3000万円を出したことになっており、指定が取り消された場合に、どのようにして運営を切り分けるのかについては明確化されていない。

良い結果が出たものとしてトライアルとしての大きな意味はあるが、要求水準を明確にしないまま、民間事業者から投資を引き出す方法が適切な事例として広がってしまうことには大きな危惧を感じる。

5.望ましい今後の方向性

図書館業務は、それぞれの図書館においてマニュアルが整備される等されているが、自分たちで業務を行うことを前提として策定したものであるため、業務が適切であるかどうかを判断する基準や、そのモニタリング手法等については十分な整理がなされていない。

一方で図書館のパフォーマンス指標についてはISO11620が作成されている。ISO11620の指標は,バランスト・スコアカードの考え方に基づき,それぞれ「情報資源・アクセス・基盤」「利用」「効率性」「発展可能性」の4つの視点に振り分けられており,さらにその中で「所蔵資料」「アクセス」「設備」「職員」「全般」の5つの図書館の活動領域に分類されている。

これらの指標を継続改善させていくことを前提としながら、仕様書の中に組み込んでいったり、それぞれのサービスの具体的な要求水準を設定する等しながら、図書館運営を望ましい形で継続していくことが望ましいと考えられる。

図書館に限らず、PFI、PPP、指定管理者事業、市場化テスト事業のいずれにおいても、業務の重要度を明確に示し、要求水準を明確化し、水準が達成できていないことが発覚してから、要求水準を満たした状態に戻すまでの修復許容時間も明確化した上で、モニタリングの仕組みを構築し、不適切な運営の場合にはペナルティーとしての減額を発動する仕組み、継続改善指標の設定等を導入し、官と民と利用者を含んだその他の関係者のすべてがMultiple WINとなる仕組みを構築することが重要である。

神奈川県「近代美術館」のPFI導入に関する検証結果をチェックした

衛生研究所に続いて近代美術館の評価についてみてみよう。

本文: 県有施設のPFI導入に係る効果等に関する検証結果

添付資料:同報告書 巻末参考資料

本報告書の大きな問題点は、本文だけを見て巻末参考資料の詳細を見ないと、この報告書の問題点が見えないところにある。

調査結果は、添付資料から確認すると以下の通りである。この添付資料の評価部分に基づいて本文が策定されているため、本文だけを見る限りにおいては、問題がなさそうに見えるが、本来の評価はどうあるべきかを考えると改善が必要な問題点があることがわかる。

神奈川県立近代美術館のPFI事業の評価

1.1来場者への既往アンケート

1−① 清潔さ

設問:施設の清潔度についての満足度を5段階で回答。
評価選択肢
割合
有効回答のみ
1 悪い
0%
0%
0%
0%
3 普通
6%
7%
26%
29%
5 良い
58%
64%
6 無回答
10%

評価 満足度5及び満足度4を選んだ人の割合は約84%、満足度3(普通)を含むと90%となっており、概して清潔な環境が維持されていると考えられる。

本来の評価:有効回答のみの割合で見ると、満足度3(普通)を下回ると評価するものはおらず、普通を上回ると評価した4と5の合計が93%であることから、概して清潔な環境が維持されていると考えられる。

1−② 施設・設備案内

設問:施設内の案内表示の内容について満足度を5段階で回答。
評価選択肢
割合
有効回答のみ
1 悪い
2%
2%
0%
0%
3 普通
20%
22%
34%
38%
5 良い
34%
38%
6 無回答
10%

評価:満足度5及び満足度4を選んだ人の割合は約68%、満足度3(普通)を含むと88%となっており、概して利用者にとって利便性のある案内表示がされていると考えられる。

本来の評価:有効回答のみの割合で見ると、満足度3(普通)をしたまわると評価するものが2%いた。1(悪い)と評価した2%の場所の特定及び悪い内容についての確認が必要である。また、普通を上回ると評価した4と5の合計が78%であるが、普通が22%と高いことから、利用者にとっての利便性を改善する余地があると考えられる。

1−③ 接客

設問:受付やスタッフの印象について満足度を5段階で回答。
評価選択肢
割合
有効回答のみ
1 悪い
2%
2%
0%
0%
3 普通
22%
23%
30%
32%
5 良い
40%
43%
6 無回答
6%

評価:満足度5及び満足度4を選んだ人の割合は70%、満足度3(普通)を含むと92%となっており、概して受付やスタッフの接客サービスは満足されていると考えられる。

本来の評価:有効回答のみの割合で見ると、満足度3(普通)を下回ると評価するものが2%いた。1(悪い)と評価した2%のスタッフの特定及び悪い内容についての確認が必要である。また、普通を上回ると評価した4と5の合計が75%であるが、普通が23%と高いことから、受付やスタッフの接客サービスを改善する余地があると考えられる。

1−④ 付帯事業

設問:ミュージアムショップの印象について満足度を5段階で回答。
評価選択肢
割合
有効回答のみ
1 悪い
2%
3%
4%
5%
3 普通
20%
27%
24%
33%
5 良い
24%
32%
6 無回答
26%

評価:満足度5及び満足度4を選んだ人の割合は48%、満足度3(普通)を含むと68%となっており、概してショップの印象は良いと考えられる。

本来の評価:有効回答のみの割合で見ると、満足度3(普通)を下回ると評価するものが8%いた。1(悪い)と評価した8%の悪い部分の特定についての確認が必要である。また、普通を上回ると評価した4と5の合計が65%であるが、普通が27%と高いことから、ミュージアムショップを改善する余地があると考えられる。

1−⑤ 付帯事業 レストランメニュー、サービス、全体の印象

設問:レストランのメニューについて満足度を5段階で回答。
評価選択肢
割合
有効回答のみ
1 悪い
0%
0%
7%
9%
3 普通
51%
64%
14%
18%
5 良い
7%
9%
6 無回答
21%
設問:レストランのサービスについて満足度を5段階で回答。
評価選択肢
割合
有効回答のみ
1 悪い
0%
0%
0%
0%
3 普通
36%
45%
29%
37%
5 良い
14%
18%
6 無回答
21%
設問:レストランの全体の印象について満足度を5段階で回答。
評価選択肢
割合
有効回答のみ
1 悪い
0%
0%
0%
0%
3 普通
29%
37%
43%
54%
5 良い
7%
9%
6 無回答
21%

評価:メニュー、サービス、全体の印象に関して、満足度5及び満足度4を選んだ人の割合はそれぞれ21%、43%、50%で、満足度3(普通)を含むと、それぞれ72%、79%、79%となっており、一定程度の満足度が得られていると考えられる。

本来の評価:メニュー、サービス、全体の印象に関して、有効回答のみの割合で見ると、満足度3(普通)を下回ると評価するものは、メニューで9%いるものの、サービスと全体の印象にはいない。メニューを1(悪い)と評価した9%の悪い部分の特定についての確認が必要である。また、普通を上回ると評価した4と5の合計は、それぞれ27%、55%、63%であり、普通が64%、45%、37%となっており、メニュー、サービスの順番で優先順位をつけて改善する余地があると考えられる。

2.在勤する県職員へのアンケート

2−① 清潔さ/温度管理等

設問:施設は常に清潔さが感じられますか。
評価選択肢
割合
A 十分清潔
50%
B 十分とは言えないがおおむね清潔
25%
C 清潔に感じられない場所があった
25%

評価:A及びBを選んだ人の割合は75%となっており、概して清潔な環境が維持されていると考えられる。

本来の評価:Cが全体の25%あることは明らかに許容範囲を超えている。場所の特定と改善対応が至急必要である。

清潔さ・衛生状況として全体の25%が清潔に感じられない場所があったと指摘していることは明らかに許容範囲を超えている。このような状態で概して清潔な環境が維持されていると評価できるのか理解に苦しむ。

清潔さについての基準が明確化されていない可能性が高い。

エリアに応じてどのような要求水準を設定するのかについて明確化した上で、利用者がみつけた非衛生的な部分に対しての対応に関するモニタリングの仕組みを構築する必要があると考えられる。

2−② 施設/設備案内

設問:施設を利用するにあたって、わかりやすい案内表示さされていますか。(案内板出入り口表示等)
評価選択肢
割合
Aわかりやすい
0%
B普通
62%
Cわかりにくい
38%

評価:A及びBを選んだ人の割合は62%なっており、概して利用者にとって利便性のある案内表示がされていると考えられる

本来の評価:Aが0%であり、Cが38%である。あきらかに分かりにくい状態であると考えられる。場所の特定と改善対応が至急必要である。

この評価は普通ではない。評価した人の3分の1以上がわかりにくいと言っているのに、どうして「概して利用者にとって利便性のある案内表示がされている」という評価が出来るのか理解に苦しむ。このような評価を行うと、他の施設でもこの程度で良いのかという話になる。

分かりにくい場所があることによって、何らかの運営上の問題が生じている可能性もあり、分かりにくい場所の特定と改善対応が必要であることは明らかである。

2−③ 温度管理等

設問:施設を利用するにあたり、温度管理や寄稿対策が適切にされていて、快適に利用できますか
評価選択肢
割合
A 十分快適に利用できる
0%
B 普通
100%
C 快適でない
0%

評価: A及びBを選んだ人の割合は100%となっており、概して利用者が過ごしやすいよう気候対策がとられていると考えられる。

本来の評価:AもCも0%であるが、どうしてAと答える人がいなかったのかが気になる。

この評価は、問題ではないかもしれないが気にかかる。緊急に対応する必要はないが、質問内容をかえて、十分に快適ではない理由がどこにあるのかを調査することに意義はある。

2−④ 施設/設備設計

設問:施設内の各設備備品等は利用しやすいものになっていますか(トイレ,音響設備,展示パネル,事務機器等)
評価選択肢
割合
A 十分利用しやすい
0%
B 普通
75%
C 利用しにくい
25%

評価: A及びBを選んだ人の割合は75%となっており、概して利用者が過ごしやすいよう施設・設備の設計がされていると考えられる。

本来の評価:Cが25%と全体の4分の1を占める。利用しにくい部分の特定と改善対応が必要である。

この評価も普通ではない。評価した人の4人に1人がわかりにくいと言っているのに、どうして「概して利用者にとって利便性のある案内表示がされている」という評価が出来るのか理解に苦しむ。このような評価を行うと、他の施設でもこの程度で良いのかという話になる。

そもそも快適でない設計がなされていた可能性もあるため、オペレーション上での対応のみで、この課題を解決できる可能性があるかどうかは調査をしてみないとわからない。4人に一人が利用しにくいと答えている点は許容範囲を超えていることから、快適でない場所の特定及び、改善対応については至急検討する必要があると考えられる。

2−⑤ サービス全般

設問:そのたサービス全般について、特段にまんぞくあるいは不満に感じる点がありますか
評価選択肢
割合
A 特段に満足できる点があった。
25%
B 特段不満足な点があった
37%
C 特になし
38%

評価:Aを選んだ人の割合は25%であるのに対して、Bを選んだ人の割合は37%となっており、サービス全般について利用者により受け止め方が異なっていると考えられる。

本来の評価:Aが25%、Bが37%と、BがAを12%上回っていることは許容範囲を超えている。具体的に利用しにくい点を特定し、その原因が何であるのかを明確化した上で、改善対応が必要である。

この評価も普通ではない。満足できる人と、満足できない人の割合を比較することがそもそも合理的ではないが、特段不満足な点がある人が回答者の3分の1以上いるというのは、明らかに許容範囲を超えている。原因を明確化した上で、改善対応が至急必要なことは明らかである。

3.不適切であっても対応をしていない背景

この評価は明らかに尋常ではない。

ある程度の悪い評価は許容範囲として認める必要はあるかもしれないが、これらの数字を見る限りにおいては、あきらかに不適切な運営状況であると言えそうだ。

このような一般的に見れば明らかに悪い評価である結果を、概ね良好と判断していることに対して、委員会から何のコメントもなかったことも理解に苦しむ。

この背景には、個別の課題で指摘されている要求水準の不明確性があるものと考えられる。

このような要求水準に対して適切に対応できない事業者に対しては、支払いの減額等のペナルティや、契約の解除等の対処が必要である。

多分、満足のいく要求をすると事業者から追加要求なのでコストアップになると言われるのかが嫌なため、要求していないのではないかという風に勘ぐられても仕方がない。

コストは下がったとしても、このように評価が悪いのであれば、明らかにVFMがでているとは言いがたい状態である。

 まず実態を把握した上で、契約の改善が必要である。

神奈川”県有施設のPFI導入に係る効果等に関する検証結果について”をチェックした

県有施設の整備に係るPFI検証委員会が平成24年4月に公表した「県有施設におけるPFI導入に係る効果等に関する検証結果について」の内容を確認してみた。

本文からは、あまり問題点があるとは感じられないが、要求水準が明確でなかったことから、サービス品質がかなり低下している可能性がある。たとえば衛生研究所においては、非衛生的な部分があると指摘したものが6%おり、職員や来訪者に病気の感染等が生じた場合には、行政の不作為の罪に問われても仕方がないような状況である。また、保健福祉大学では、38%が施設設備案内はわかりにくいと評価しており、24%が温度管理が快適でないと評価している。美術館では、25%が清潔に感じられない場所があったとしており、38%が施設設備案内がわかりにくい、25%が施設設備設計が利用しにくい、37%がサービス全般に特段不満足な点があったと評価している。

このような悪い結果を、概ね良好と評価することは常識を逸脱している。この点は私も神奈川県民であるので、神奈川県として真剣に検討することを要望したい。

1)報告書全般について

4回の会議で十分な検証ができるものとは考えられないが、「はじめに」で記載しているように、タイプの異なる6種類のPFI事業について、幅広い視点から横断的に検証したものである。

報告書のタイトルである「PFI導入に係る効果等の検証」を行うのであれば、平成19年11月にまとめられた内閣府のPFI推進委員会報告書「真の意味の官民のパートナーシップ(官民連携)実現に向けて」で指摘されているようなPFIを取り巻く個別の課題について検証すべきであったと考えられるが「本検証でも具体的に解決に向けた方途まで追求しきれなかった。」とコメントされており、具体的な事業毎の検証はなされなかったことがわかる。

ちなみに、内閣府が指摘した個別の課題とは以下のような項目についてである。

*******************************************

1)要求水準の明確化
(1)要求水準書作成前の段階での明確なコンセプト形成の必要性
(2)要求水準書の具体化、明確化、精緻化の必要性
(3)コストと要求水準書の内容(サービスの質)との関係を明確化する必要性

2)契約書等の標準化の推進

3)リスクの分析及びリスクマネジメント

4)より透明性が高く民間の創意工夫が生かせる入札プロセスの実現
(1)透明性の確保
(2)対話方式の充実
(3)より民間の創意工夫が生かせる入札プロセス

5)運営段階における課題に対する適切な対応
(1)制度変更、技術革新等に伴う当初定めた要求水準書の内容の変更に適切に対応するメカニズムの導入
(2)事業の運営が適切になされるようなモニタリング、支払いメカニズムの充実
① 要求水準書、モニタリング、支払いメカニズムの連動の必要性
② 金融機関のモニタリング等の役割の重要性とユニタリーペイメント
③ 直接協定のガイドライン等への適切な位置づけ等の検討等
④ インセンティヴのあり方等支払いメカニズムの充実の検討
⑤ 建設段階のモニタリングの実施方法等についての検討
(3)中立的な裁定機関の必要性
(4)事業期間終了後の課題に対する対応
(5)運営の比重の高い事業における選定事業者のマネジメント能力の重要性

6)VFM 評価についての継続的検討

7)ファイナンスについての検討25
(1)資金調達のあり方についての検討
(2)地域金融機関の活用の必要性

8)補助金、税制等の支援措置のイコールフッティングの必要性

9)他の官民連携手法とのノウハウの共有、活用及び必要な調整の実施

10)コンサルタントの役割の更なる向上の必要性

11)官民双方がノウハウの共有化をはかる効率的な仕組みの検討

12)プレーヤーの拡大の必要性

13)PFI の市場の拡大に向けた検討

14)地球温暖化防止への対応

15)災害対応その他現下の政策課題にかかわる検討

地方財政の健全化、地域の活性化、国有財産の有効活用への対応については、PFI の具体的な活用の方策等について、今後さらに検討を深めていくものとする。

*******************************************

 

官民ファンド 看板倒れと言われる中の官民連携インフラファンドをチェックした

2013年7月11日付けの日経新聞に、”政府の緊急経済対策、実績乏しく 官民ファンド 看板倒れ 法整備後回し、資金塩漬け”という記事が出ました。

2012年度補正予算や13年度予算で設立・強化が決まった主な官民ファンドが次のように8つ記載されています。

1)地域経済活性化支援機構、
2)産業革新機構、
3)農林漁業成長産業化支援機構、
4)民間資金等 活用事業推進機構、
5)海外需要開拓支援機構、
6)官民イノベーションプログラム、
7)日本政策投資銀行の競争力強化ファンド、
8)耐震・環境不動産形成促進事業)

これらのファンドを統括している内閣官房の官民ファンド総括アドバイザリー委員会のホームページを見ると、これらのファンド以外にも、独立行政法人中小企業整備機構の投資ファンド、海外需要開拓支援機構があるため、官民ファンドは10種類であることがわかります。

このうち、PFI事業に関連性のある 4)民間資金等活用事業推進機構についてwebで情報を検索してみました。

官民連携インフラファンドを説明する資料として内閣官房PFI法改正法案等準備室・内閣府PFI推進室が作成した「株式会社民間資金等活用事業推進機構(仮称:官民連携インフラファンド)についてという資料が開示されています。http://www.cas.go.jp/jp/seisaku/fund/dai2/siryou1.pdf

詳細な説明が無いため、わからない部分が多いのですが、開示された資料にもとづいてその内容についてコメントします。

まず、大臣答弁でもそうだったのですが、PFIとはどのようなものかについての説明が曖昧です。

PFIとは、民間の資金、運営能力及び技術的能力を活用して、従来調達と同一水準のサービスをより安く、又は、同一価格でより上質のサービスが提供できる手法となっていますが、具体的にはそのようなVFMを生み出す源泉がなんであるのかについては記載されていません。(基本的なPFIの考え方については http://office-kumagae.com/ の2013年7月12日付ニュースを参照)

また、発想と仕組みの転換方として「短期的な需要創出」から「経済成長・財政健全化の両立へ」をやってもらわなければならないのですが、「PFI/PPPについては、旧来の延払い型から受益者負担の下、最大限民間の資金・ノウハウを活用するものに抜本的に変えていく」としている点が気になります。
述べ払い型と対比すべきものは、業績連動型であって、受益者負担型ではないからです。

次に、アクションプランに記載されている対象となる事業構成および、金額がポテンシャルのある市場規模を意味しているのか、遂行予定のある事業であるのかわかりません。

1)コンセッションを活用したPFI(2~3兆円)
2)事業収入等で費用を回収するPFI(3~4兆円)
3)公的不動産の有効活用等の民間提案PPP事業(2兆円)
4)その他の事業類型(業績連動、複数施設の包括化(3兆円)

そして、これらの数値を積み上げて、10兆円〜12兆円の根拠としていますが、但し書きとして次のような記載があります。

※事業規模目標については、民間の提案、イニチアチブを最大限尊重することから、具体の事業計画を精緻に積み上げたものではなく、各府省による取組の推進やインフラ投資市場の活性化等が図られることを前提に、官民で共有するべきものとして設定したものである。

これだけの説明では具体的に何を意味しているのかは不明ですが、実現可能性が低いものも含まれているという意味にも取れそうです。つまり、全てのケースの実現可能性が全体的に20%ならば、2兆円〜2.4兆円になるかもしれないということを言おうとしているようにも見えてしまいます。

アクションプランならば、もっと具体性のあるものにしないとアクションの取りようがないのではないかと感じます。

事業例①の羽田空港は、旅客ターミナル等整備・運営事業、貨物ターミナル整備・運営事業、エプロン等整備事業に分割していますが、世界的な空港のPPPの動向は、これらの一括発注であることを承知の上での前提なのかについても気になります。

事例②は下水道工事のみです。民間ノウハウの活用が可能な上水道との連携についての考え方が記載されていない点も気になりますし、自治体が経営管理・監視・監督をしたり、企業債を起債することになっていますが、民間資金調達との資金の切り分けがどうなっているのかがわかりません。

法改正の概要において、この機構が対象とする事業が独立採算型の事業に限定されていますが、なぜ限定しているのかについては明確な理由が見当たらない点も気になります。
さらに、官民連携ファンドの説明において、国と民間の出資がありますが、民間の融資(出資も含まれるかどうかは不明)に対してなぜ政府保証をつけるのかわかりません。株式会社に事業内容を評価させて融資を決めさせるのであれば、政府保証は不要なはずですが、出資した事業が破綻した場合に、税金で民間損失を補償する必要がどこにあるのでしょうか?モラルハザードにつながる可能性があります。このような、いたずらに民間を保護する仕組みはかえって民間の競争力を低下させることにつながりかねません。

加えて、インフラファンドの概要を示す上で最も重要だと思われる点ですが、どのような基準でインフラ出資を行うのか、また、どのような組織にそのインフラファンドの出資を行わせるのかについての記載がありません。少なくとも、直接PFI事業に出融資する目的と、民間インフラファンドに出融資する目的は明確にしてもらいたいものです。
全般的にイメージ図だけの記載が多く、説明がないのが気になりました。本当に議論ができたのか心配です。

 

マレーシアのPPPからわが国のPFIの改善の方向性を見いだす。

先日、東洋大学のアジアPPP研究所公開セミナーに参加し、国際イスラミック大学マレーシアのカヘアルーディン教授によるマレーシアのPPPの話を聞いてきました。

マレーシアのPPPの概要と、その具体的な内容についてはPFI/PPP標準化ブログで説明しましたので、興味のある方は参照してください。

<割賦払いの日本の特殊なPFI>

さて、2011年にPFI法が改訂され日本のPFIにもコンセッションの仕組みが導入されました。しかしながら、依然として日本のPFIは割賦払い方式のままです。

日本のPFIは、現在フィリピンやマレーシアを代表とするアジアで活性化しているPPPとは全く異なったものです。

日本のPFI手法は発注者が施設を所有することが多く、そのため、施設の劣化に伴う施設の不具合リスクが民間事業者に移転できていません。

このように、日本のPFIでは、民間事業者に本来とらせるべきである施設の維持管理上のリスクを公共側が抱え込んでいるのです。

<本来のコンセッション方式のPFI>

もともと英国で生まれたPFIとは、利用料金を公共が負担するサービス購入型であれ、一般の利用者に利用料金を負担させる独立採算型であれ、また、その中間である利用料金と補助金で成り立つJV型であれ、コンセッションの仕組みであることにはかわりありません。

コンセッションとは事業の運営権の期限付き譲渡であり、利用者収入が無い場合には、公共がそのサービス購入を約束する契約です。サービスの購入である為、サービスが適切に提供された結果として合意額の支払いが行われますが、サービスの品質が合意された要求水準を満たされない場合は、合意額を減額して支払いが行われます。

<民間へ公共が今までとっていたリスクを移転するPFI手法>

PFI手法が民間へのリスク移転の仕組みであると言われる所以は、民間事業者がコントロール可能なサービスの未遂行リスクや、サービス品質の低下リスクを民間に移転するので、民間ノウハウを使ってそれらがコントロールできるようになるからです。

民間にとれないリスクを移転しようとすると、民間が事業参画意欲をなくしてしまいます。

それでも無理にリスクを移転したまま民間に事業参画してもらいたければ、リスクプレミアムコストを支払うしか方法はありません。

重要なのは、民間がコントロール可能なリスクを民間に移転することです。民間は自らコントロールできるリスクであるため、事業遂行によって確実に利益が生み出せるようになります。しかもその価格が従来の公共が自らの責任で行っていた場合よりもコスト的に安くなる為に、官民にWIN-WINの関係が成り立つのです。

コンセッション権を確定することや、利用者が変動するリスクを民間に移転することを目的にしてしまうと事業は失敗してしまいます。

<必要だったのは物権ではないコンセッション>

従って、PFI法の改定では、物品を購入するという割賦払いを禁止すべきだったのです。

そして、公共が民間に運営権(コンセッション)を渡して、民間が適切な運営を行っている限りにおいて公共が当該サービスを購入しつづけるか、民間に利用者から料金を徴収する運営権(コンセッション)を与えるか、その中間の利用料金で足らない部分を民間が適切な運営を行ったことを条件に補助金として負担すれば良かっただけでした。

ところが、2011年のPFI法の改訂では、運営上の民間のパフォーマンス変動責任と関連性の無い物権としてコンセッション権を取り扱うようにしてしまいました。

国内の多くのPFIコンサルによると、コンセッション権を物件と見なして、融資の担保にすることによって、金融機関が事業介入しやすくなったとよく言われますが、本当にそうでしょうか。

なぜなら、事業介入をする時期は、事業が破綻する前の事業破綻の兆候が見え始めた段階であるべきであり、事業が悪化してからの介入では事業破綻の回避が極めて難しくなるからです。

事業に介入するのは、事業契約が生み出すはずの事業利益を生み出す機能に問題が発生した段階です。

その為には、コンセッション権を物権と見なして金額を確定することが重要なのではなく、事業が想定通りに機能し続けるための仕組み(事前に要求水準を設定し、モニタリングを行い、その結果を支払に連動する仕組み)を検討する必要があったのです。

<割賦ではキャッシュフロー改善と財務状況改善が両立しない>

PFIを専門にしている訳でもないのに、日本在住の外国人は、日本のPFIの仕組みはおかしいということを理解しているようです。

その理由は、多分バランスシート(B/S)と損益計算書(P/L)を理解しているからだと思います。

B/SとP/Lの関係が理解できていれば、割賦払いによってキャッシュフローを改善しようとすることは、財政状況を悪化につながると理解できます。英国においても、B/SとP/Lの導入後にPFIの仕組みが活性化しました。

<割賦ではなく、サービス料金の業績連動支払いに基づいたマレーシアのPPP>

日本は政府が民間の資金を活用して割賦払できるようにするPFI法律を国会で通しましたが、一方、マレーシアのPPPでは、基準として次の9つの要素を示しており、業績連動支払いにもとづいたサービス購入の仕組みであることがわかります。

1. 官民のパートナーシップの要素があること
2. 公共セクターがアウトプット仕様書(手段ではなく要求する結果を示す仕様書)を作成すること。
3. 民間セクターがイノベーティブで経済的な要素を持った具体的な手段や手法を示すこと
4. 支払いは、KPI(主要業績指標)に連動したものであること
5. 施設のメンテナンスが契約に含まれていること
6. 設計・施工・資金調達・メンテナンス・運営の要素を持っていること
7. コンセッション契約終了時には資産が公共に譲渡されること。
8. リスク配分が最適な状態になっていること
9. ライフサイクルコスティングを評価対象とすること。

<地方自治体のPFIの改善は可能>

日本のPFI手法は2011年の法改正によってコンセッションが導入されましたが、割賦払いの要素は残ったままです。また、国や、独立行政法人がPFI手法を導入する場合には、PFI法に縛られるため、コンセッションを利用する場合には、法律に準じてコンセッション権を物権と見なす必要があるかもしれません。

一方で、地方自治体は、地方自治法がPFI法に優先するため、PFI法に縛られる訳ではありません。アジアの途上国が導入できる程度までに、PPPのガイドラインは整備されています。

地方自治体が抱える老朽資産は多く、これらの対策に必要な投資を公共投資だけでカバーすることは不可能です。

今までのように、公共セクターが手段を決めるのではなく、要求するアウトプット仕様をきめ、民間にイノベーティブな具体策を低減させ、サービス内容をKPIでモニタリングし、業績連動支払い等によってリスク分担を最適な状態にすることで、ライフサイクルコストを低減させるPFI事業が活用できるようになります。

民間の資金と民間のノウハウを活用することで官民がWIN-WINになるという意味不明なPFI手法を、単なる割賦払いとして活用するのではなく、人類の英知を集めて構築したPFI/PPPの仕組みを活用して、自治体の経営改善に取り組んでいかれることをお勧めします。

PFI法導入後14年近くが経過しているのに、いまだに明確になっていないPFI手法

PFI手法が導入され、400件以上実施されているにも関わらず­、PFIの定義を国会答弁で明確化できていないことは大きな問題­である。

2013年5月30日の内閣委員会の答弁(http://www.youtube.com/watch?v=iOyqxSZyldI)において、従来型調達と比較してPFI調達は次のようなものであると説明された。

「従来型は、 役所が事業(施設)を設計して整備し関税後に税金で費用を支払い、維持管理も役所が税金を使って行う。これが、PFI事業だと、施設の機能とサービスを発注(性能発注)し、民間が施設の設計から維持管理までを行うことにより、施設の効率的な維持管理ができるようになり、従来型よりも安いコストで最適なサービスができるようになる。民間が資金調達することで、事業収入を確保することで民間資金が最大限に活用できるようになる。民間のお金で公費をかけないで、民間の運営によって公的な事業が取って代わられる。」

この説明に対し、「説明は良くわからなかったが、公の仕事を民間のノウハウを生かしながら効率的に実施してもらうことをPFIという解釈で問題ないか。」と、別の曖昧な表現で確認が行われ、それを「よりわかりやすくなった」とコメントした。

そもそも、PFI手法を民間のノウハウを活用して公共サービスを従来よりも­効率的に実施することという曖昧な定義で済ませている国は、発展­途上国を含めて日本ぐらいである。

同答弁の中で、90%の自治体はPFI手法を実施していないことが述べられていますが、どんなメリットがあるのかわからないような曖昧な手法を活用することが、活性化しない原因なのではないだろうか。

世界的に認識されているPFI手法とは、民間の資金を活用して整­備した施設を民間に所有させ、所有者の修繕義務原則を活用して、­施設に生じる不具合リスクや大規模修繕のコスト変動リスクを民間­に取らせる仕組みである。

従って、公共は、施設の機能やサービスのパフォーマンスを要求水­準に記載して、その結果を支払いに連動させることで、これらのリ­スクを民間に移転できるようになる。あくまでもライフサイク­ルコストにおいて、品質を確保した上でコスト削減をすることが目­的である。従って、施設整備費を削減し施設購入費を割賦払いする方­法としては認識すべきではない。

PFI手法とは、公共が施設を所有するのではなく、施設をサービスとして、それに付随するサービスと一緒に“包括的­サービス購入”して、民間にリスク移転することによってVMFを生み出す仕組みであるという認識が必要だ。